●物流基礎
3定管理の実施方法|倉庫の備品を整頓しよう|物流基礎
この記事で分かること
- 3定管理とは何か、なぜ必要か?
- 3定管理のコツ
3定管理とは「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」のうち、「整頓」するために必要な方法の一つです。整頓とは「必要な物を決められた場所にいつでも取りやすいように置くこと」と言われていますので、決められた場所にいつでも取りやすく配置するための決め事が必要となります。
倉庫や作業場で3定管理を行うことで、備品の紛失や探すムダな時間をなくすために効果があります。今回は、3定管理の概要や実施方法を解説します。
目次
3定管理とは?
3定管理とは、職場において備品の紛失を防ぐための方法の1つで、「整頓」の基本となる取り組みです。3定管理が徹底されていると、備品がどこにあるのか、どの備品が無くなっているのかが一目でわかります。
そのため、特に物の移動が多い物流業や製造業の現場で有効な管理手段といえます。
なお、「3定」というワードは以下3つの単語の意味を表しています。
定位・・・決められた位置に置く 定品・・・決められた物を置く 定量・・・決められた量だけを置く |
3定管理の対象物は、主に刃物類や台車、バーコードリーダーなどの工具・道具や、テープや梱包資材などの消耗品類です。
3定管理を徹底できている作業現場では、使用頻度の少ない工具類もいざ使う時に見つけやすく、作業の都度必要な物を探すという余計な稼働をかけずに済みます。
反対に「整頓」の基本となる3定管理ができていない現場では「清掃・清潔」といった取り組みも不十分なことが多く、足場に物が散乱していることによる転倒などの事故発生率も高くなります。
作業効率を上げるだけでなく、怪我や事故を未然に防ぐためにも3定管理は決して疎かにしてはならない取り組みです。
3定管理を定着させるにあたり、まずは現場スタッフ一人ひとりの意識づけが重要です。
「ただ物を置くための場所」という備品置き場に対する認識を、「いつでも物が探しやすく、取り出しやすく、在庫状況が分かりやすいように整頓されている場所」という認識に変えていくことを目指しましょう。
3定管理①「定位」の実施方法・コツ
3定管理のひとつ「定位(ていい)」とは、物を置く位置のことです。
備品を使ったら同じ場所に戻されるようにするため、置き場内の「どこ」に物を置くのかを定めます。物の大きさや重さなどに合わせて「どこに置けば取り出しやすく、しまいやすいか」ということを考慮しながら配置を決めていきましょう。
「取り出しやすさ、しまいやすさ」に加え、「分かりやすい場所の表示」も定位を継続する上でのコツです。広い範囲から徐々に絞り込むように表示すると分かりやすくなります。
例えば、以下のような表示方法です。
1. 倉庫や資材・備品置き場のマップを作成する 2. 物が置かれている棚に番号を割り振る 3. 番号を割り振った棚ごとに配置する物の種類を決める 4. 物の名称が書かれたネームプレートを設置したり、プリントラベルを貼るなどして場所を表示する |
上記の例では、大きく区分けした範囲からだんだんと物の場所を絞り込んで表示しています。このように、誰でも分かりやすいように表示するのが基本です。
また、工具の形状にくり抜いたスポンジなどを設置し、直感的に配置する工具が分かるようにしておく方法も有効です。このような方法を「形跡管理」または「姿置き」といいます。
台車のような大きな備品類の場合は、配置する場所にマーキングテープでラインを引く方法がおすすめです。駐車場に引いてあるようなラインをイメージすると分かりやすいと思います。
定位管理の方法は配置する物の種類や倉庫の環境に応じて多種多様です。それぞれの状況に適した方法で行いましょう。
3定管理②「定品」の実施方法・コツ
続いて3定管理の「定品(ていひん)」は、保管場所に置く資材や備品の位置ではなく「品目」を決めることをいいます。この場所には、この資材が必要といった「何が必要か」を考えます。無作為に置く物を決めるのではなく、作業場所や作業工程などを考慮して決めることが大切です。
例えば、梱包作業を行う場所の近くに置く物はテープや緩衝材などの梱包資材に限定するなど、シチュエーションに応じて必要な備品だけで整えられた環境をつくる工夫が必要です。
具体的なコツとしては以下のとおりです。
・その作業場所で使用する物を、すぐ近くに保管する ・資材は種類ごとに分別して、違いを明確にする ・資材の使用頻度が高いものほど、取りやすい位置に決める |
以上のポイントをおさえて定品を決めることで、作業効率がアップします。
定品を決める上で大事にしたいのは「誰でも分かりやすい規則性」があることです。
梱包作業現場付近には梱包資材を配置し、ピッキングを行う現場付近には台車やバーコードリーダーを配置するような、作業現場との関連性が分かりやすい物を定品としましょう。
また、資材や備品の種類ごとに分類することも有効です。カッターやハサミなどの刃物類を一箇所にまとめるなど、初めて資材・備品置き場を訪れた人でも一目で分かる規則性があるとよいでしょう。
3定管理③「定量」の実施方法・コツ
最後に3定管理の「定量(ていりょう)」は、資材や備品の量を決めることをいいます。過剰な量の資材や備品によって作業スペースが圧迫され、業務効率が落ちてしまうことを防ぐ目的があります。
定量を定めるためには、使用頻度などを考慮して「どれぐらいの量が必要なのか」を検証することが必要です。まずは1ヵ月分の必要最低数を計算し、それを基準に定量を調整していくとよいでしょう。
具体的なコツは以下のとおりです。
・需要と供給のバランスに基づいた適切な量を見極める ・定量を超えた分の資材や備品は倉庫などのバックヤードで管理する ・在庫数が閾値を下回ったときに補充・発注するといったルールで運用する |
定量を定める上で重要なポイントは、適正量を見極めることです。
頻繁に資材や備品が在庫切れになってしまう状況を避けるためには、必要量より多めの在庫数を定量として定める必要があります。しかし在庫量が多過ぎるとスペースは圧迫され、作業効率や現場作業の生産性を下げてしまうことがあります。
定量を定めるためには、まずは物の必要最低数をしっかり計算することから始めましょう。
最低必要数が見えれば、その数量が消費される日数の手前で必ず補充するルールを決めて、基本的に資材や備品が不足することがなくなります。ただし、通常よりも大量に使用するようなイレギュラーなケースもあります。「この個数を切ったら必ず補充する」というようなルールも必要です。備品の補充や発注が必要となるラインを設定し、現場スタッフ全員に周知しておきましょう。
3定管理を行うメリット
では、3定管理を行うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
商品への異物混入を防げる
3定管理を徹底し、常に物が決まった場所に置かれている環境がつくられることで、商品への異物混入を防ぎやすくなります。
3定管理が徹底されている現場では、作業スタッフに「使った物をすぐに定位置に戻す」という意識が根付くため、物を置きっぱなしにすることが低減されるのです。
「使った物をすぐに定位置に戻す」という意識が低い現場では、お客様へ配送する商品に工具などを混入させてしまう可能性も出てきます。物流事業において、異物混入は企業の信用を失う重大なミスです。それが原因となり、お客様へ慰謝料などの損害賠償金を支払うケースも考えられます。
このようなトラブルを防ぐためにも3定管理を行うメリットは大きいといえるでしょう。
紛失などの異常に気づきやすくなる
工具や部品などの紛失は、正しい作業ができなくなり、紛失物を探す時間に処理しなければならない業務が止まるといった支障がでてきます。毎日3定管理が実行されているかチェックするルールを決めておくことで、物が紛失していたり、必要な物が足りていないといった異常事態にいち早く気付くことができます。また、備品の在庫切れや破損・故障などのトラブルに対して最短で対応することが可能です。
必要な物が「定量」として管理されていることにより、日々の作業時間中に無駄な資材や備品の補充に時間を割かれる必要もありませんし、毎日在庫数をチェックをしていれば、最短で補充・発注といった対応をとることができます。3定管理は、長期的に見ると人件費削減にも関わる重要な取り組みなのです。
最新の備品数の情報を維持できる
常に備品の数や場所の情報を把握できるようになることも、3定管理を行うメリットの1つです。必要な備品の在庫数が作業スタッフに共有されていることにより、「必要な物が、必要な量だけ揃っている」状況を維持しやすくなります。
そのため、備品の在庫切れによる作業ロスを抑えるためには、3定管理は必須の取り組みだといえます。
ただし、3定管理を継続するためには作業スタッフへの意識づけが重要です。備品を置く場所や量、物がが変わったときは必ず情報を更新するように呼びかけておきましょう。
また、情報を更新した日時を記録し忘れないように注意が必要です。更新日時が記録されていないと、作業スタッフ間で情報がうまく伝達されず、変更された配置や量がまたすぐに戻されてしまうといった事態になりかねません。
3定管理を徹底している企業事例
3定管理を徹底している会社としては、日本を代表する自動車メーカーがあります。
その自動車メーカーでは、「3定」にくわえて「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の「5S」を含めた「5S3定」として、作業現場の生産性を徹底的に追求した取り組みが行われています。
この「5S3定」は非常に合理的なルールのもとに実践されており、世界中の様々なトップ企業が参考にしているほどです。
特に「5S」の中でも「整理・整頓」が徹底されていることにより、「物を探す」という稼働を最小限に抑えています。製造における「あらゆるムダの排除」を極めたこの自動車メーカーでは、「物を探さなくていい環境」をつくることが、高い生産性を実現するための必須事項であるとされています。
「整理」の基本となるのが「3定管理」です。世界中のトップ企業が、この自動車メーカーの「整理・整頓」を参考にしていることからも、「3定管理」の重要さがお分かりいただけるのではないでしょうか。
AIを用いた在庫切れ防止システム
このように物流現場で重要視される3定管理ですが、近年はAIを活用して自動で管理する手法も登場しています。最近は部品や資材などに特化した在庫管理システムも登場しており、AIが需要を予測して適切なタイミングで発注のアラートを出すシステムもあります。
部品に特化した需要予測機能がついた在庫管理システムでは、AIを活用することにより部品ごとに行っている需要予測精度を従来比で25.6%改善するといった効果を公表しているものもあります。
このシステムはかつて、部品ごとの先行きの需要を直近12カ月の出荷数量の平均と季節変動要因をもとに、各月の需要増減を指数化したパラメータを組み合わせて予測していました。しかしこの手法では、過去の出荷数量実績に左右されるため、その過去実績に傾向変動が強い場合については予測精度が落ち、その予測誤差から在庫の過剰や不足といった課題がありました。
これに対して、AIが各部品の利用状況を最大20パターンまで分析して傾向を集約し、過去の季節特性や消費状況の推移も併せて管理者に提示し、現場の予測担当者の意思決定を加えられるようにしたことで、複数年にわたる長期的な傾向成分と季節ごとの需要変動に応じた需要予測が導き出されるようになっています。
このような部品や資材に特化した、AIによる需要予測システムを導入することで、3定管理の「定量」を対策し、在庫切れを防止することもできます。
まとめ
3定管理とは「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」のうち、「整頓」するために必要な方法の一つで「整頓」の基本となる取り組みです。
決められた位置に置く「定位」、決められた物を置く「定品」、決められた量だけを置く「定量」の3つの「定」から、3定管理と呼ばれます。3定管理の対象物は、主に刃物類や台車、バーコードリーダーや工具などの備品です。
3定管理を徹底できている作業現場では、使用頻度の少ない工具類もいざ使う時に見つけやすく、作業の都度必要な物を探すという余計な稼働をかけずに済みます。反対に「整頓」の基本となる3定管理ができていない現場では「清掃・清潔」といった取り組みも不十分なことが多く、足場に物が散乱していることによる転倒などの事故発生率も高くなります。
3定管理を行うことで、「商品への異物混入を防げる」「紛失などの異常に気づきやすくなる」「最新の備品数の情報を維持できる」といったメリットがあります。日本を代表する自動車メーカーでも、3定管理は重要視されており、世界の突飛企業がその取り組みを研究して導入しているほど重要視されています。
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