物流基礎

流通加工とは?流通加工の概要とアウトソーシングすべき理由を解説

流通加工とは

この記事で分かること

  • 流通加工とは何か、なぜ必要か?
  • 流通加工の実施方法

流通加工とは物流工程の一つで、商品を購入者に届ける前に行う加工のことです。ギフトの包装や、アソート商品の箱詰め、商品の組み立てなど非常に多くの加工があります。

流通加工は消費者の体験価値を向上させるために重要であり、輸送コストを削減できる側面もあるため、事業者側にとってもメリットがあります。

今回はそんな物流加工について、内容・目的からメリットや注意点について解説します。

流通加工とは?

流通加工とは、商品が生産されてから購入者のもとへ届くまでの流通の過程※で、商品の価値を高めるために施す加工全般を指します。

流通加工が施されることで、商品に付加価値をプラスして顧客満足度を高めたり、物流作業をやりやすくするための物流作業における効率化が期待できます。

例えば、商品へのラベル貼りやタグ付け、お菓子やギフトなど複数の商品をアソートして詰め合わせる作業、自転車などの組み立て、大きなサイズの容器から小さいサイズの容器への詰め替えなどは、代表的な流通加工作業です。

これらの流通加工を行うには作業スペースや設備などが必要になるため、生産拠点である工場や販売店舗以外の場所へ一度商品を輸送し、商品加工を施した後に最終納品先へ配送(横持ち輸送)する手間がかかります。

近年では、この輸送コストを削減するために、物流センター内で流通加工を行う企業が増えています。そのため物流センターの果たす役割も多様化しています。

※物流の6大要素とされるのは、「輸送・配送」「保管」「荷役」「包装・梱包」「流通加工」「情報処理」で、「流通加工」は6大要素の1つとなります。

物流の6大要素のDX化については、こちらをご覧ください。

流通加工の内容

流通加工の業務は多岐に渡り、商品の種類によってもその内容が異なります。

ここでは、代表的な流通加工業務を紹介していきます。

検品

完成した商品をチェックし、不良品を除外する検品作業も流通加工の一つです。

破損していないか、汚れや色ムラがないか、異臭がないか、正常な挙動をするか、など、細かい検査を通過した商品のみを出荷することで企業の信頼が保たれます。

包装・封緘・封入・梱包

「包装」は、商品の見栄えをよくするだけでなく、破損や品質低下を防ぐ意味でも重要です。商品に合った梱包材や緩衝材を使用し、外部の衝撃から商品を守る役割を果たします。

その包装作業時に、説明書・カタログ・カードなど印刷物や、販促用サンプルなど物品を封筒やOPP袋に入れる「封入」作業や、それらに封をする「封緘」作業も多く発生します。

また「梱包」は包装と同じ意味をもつ言葉ですが、流通加工の作業においては、一般的に工作機械など大型の製品を運搬するための木箱など強固なケースを使用する作業を指します。

その他

他にも、以下のような作業が流通加工に含まれます。

  • 丁合い:種類・量・順番をそろえる作業。複数の書類や雑誌をひとつにまとめたり、折丁をページ順にまとめて一冊の本に製本したりします。通販ビジネスのカタログ冊子同梱時にも発生する作業です。
  • 員数:注文の数と同じ商品点数がそろっているかを確認する作業です。
  • 名寄せ:同じ届先に対して発送物が複数ある場合に一つにまとめる作業です。
  • 貼り:バーコードシールや値札を貼り付ける作業です。
  • 付け:プライスタグなどを商品に付ける作業です。
  • 設定:電子機器の初期設定などを行う作業です。
  • 組立:自転車やパソコンなど、別々のメーカーから届くパーツを組み立てる作業です。

流通加工のメリット

ひと手間をかけて流通加工をすることによって、以下のようなメリットがもたらされます。

顧客の作業負担の軽減

電子機器の初期設定や、陳列器具の組み立てなどの流通加を行うことで、顧客自身の作業負担を軽減でき、スムーズに商品の利用を始めることができます。

このようにストレスのない導入をサポートできれば、他社との差別化にもつながり、結果として販売数の増加も期待できるでしょう。

商品の付加価値及び企業への信頼の向上

商品が手元に届いた時に、丁寧に包装されていたり、わかりやすく説明書や付属品が同梱されていたりすると、ブランド・企業への好印象を与え顧客のリピートにつながります。

また、スタッフが押印済みの「検針済」シールが貼られた商品の方が、何もない商品よりも信頼性が高くなることもあるでしょう。

反対に、破損品が届いたり、配送中に品質低下した商品が届いたりすると、信頼獲得ができずリピート顧客を生むことも難しくなります。

物流作業の効率化

配送のしやすさなど、後の物流作業を見越して加工・包装することで、物流作業全体の効率アップにつながります。

流通加工の注意点

物流担当者

流通加工のプロセスを充実させたいと検討するにあたり、注意すべき点にはどのようなものがあるのでしょうか?

コスト

流通加工は作業工程が多く、設備や資材、作業スペースが必要となるため、自ずとコスト負担が増加します。

流通加工業務をすべて自社で行う場合は、人員確保が欠かせません。

また副次的に発生する課題として、流通加工に投資した場合、商品自体への予算配分が減ってしまい、商品力(クオリティや容量など)に影響を与える可能性があります。

単純かつ難しい仕事

複雑な形状をしている商品の梱包や、自動化できない初期設定など、流通加工作業の中には手作業が欠かせない場合もあります。その多くは、比較的シンプルな作業であるものの、ミスなく処理スピードを上げるには、ある程度の経験が必要です。従業員の入れ替わりタイミングなどで熟練度の低い作業者が対応する場合、トラブルが起きやすくなります。

緊急発送への対応

クレーム対応や急発注などで急いで出荷をしたい場合、流通加工の体制が整っていないと、その加工フェーズで時間がかかってしまい、出荷の遅れにつながることがあります。

イレギュラーな対応も想定した加工体制の検討が必要です。

コアビジネスとの資源配分

企業のリソース(資金・時間・人材)は有限であるため、流通加工改善の必要性を理解していても、コア事業成長のための投資を優先させるケースは少なくありません。

もちろん商品力の向上やサービス改善は欠かせませんが、流通加工への投資がどのようなメリットをもたらすかを客観的に分析し、適切な資源配分をすることも忘れてはいけません。

進む流通加工の自動化

流通加工作業でも、自動化の技術が進められています。

これまで熟練の職人に頼っていたような業務も、AIの進歩で自動化が可能になりました。

例えばクッキーのような焼き菓子を一個ずつOPP袋に封入するような場合は、クッキーの焼き具合や割れていないか欠けていないかなどの不良品をはじく作業をしていないと、クレームの原因にもなりますし、封入作業も無駄となります。

そこでAIを活用し、クッキーの焼き色から焼け具合を判断し、割れていないか欠けていないかといった形状も自動でチェックするシステムが出来上がっています。「熟練者認証装置」とも呼ばれているこの技術は、AIカメラによって不良品と判定したクッキーをライン外に排除します。ラインを通過したクッキーだけを一個ずつOPP袋に封入すれば、不良品が混入しないというものになっています。

このような自動化技術が進むことで、よりスムーズでミスのない効率的な流通加工作業が進められるようになってきています。

流通加工 アウトソーシングのすすめ

流通加工のプロセスを一貫して行う体制を整える大企業がある一方、流通加工をアウトソーシングしている中小企業も多数存在しています。

ここでは、流通加工を外部委託する際のメリットと注意点を解説します。

アウトソーシングのメリット

アウトソーシングの最も大きなメリットとして、流通加工のノウハウが社内にない場合でも、導入直後から効率よく、プロのクオリティを担保できることです。

自社対応をスタートする場合は、マニュアル構築や従業員の教育期間を経て導入し、さらに、少しずつ業務改善を重ねてオペレーションの精度を高めていくことが一般的です。

その過程では、当然ながらミスが起きることも考えられます。

一方、外注先の業者は流通加工を含めた物流のプロですので、ミスを未然に防ぐ体制ごと導入でき、結果的に企業・ブランドイメージを損なうリスクの軽減につながります。

さらにアウトソーシングの場合は、急な大量発注への対応や、反対に閑散期は稼働を減らすなど、発注量に合わせた臨機応変な対応が可能です。

自社対応時のように人手が足りなくなったり、余ったりする課題解決にも有効です。

アウトソーシングの注意点

このようなメリットをもたらす半面で、注意すべき点もあります。

まず最初の業者選定時の検討が不十分な場合、コストとサービス内容のバランスが崩れ、事業の収支が合わず、業績が悪化してしまう可能性があります。

流通加工業者への外注を検討する際は、以下について検討してみましょう。

  • どこまでの業務をアウトソースしたいのか、業務内容を洗い出し、社内で合意を取った上で、業者が提供可能なサービス内容と照らし合わせて判断をする。
  • 事業の実情に合わせて、アウトソーシングにかけるコストの上限を決めておく。

その予算内で必要業務を請け負ってくれる業者を選定する。

業者の提案任せにせず、自社の課題解決につながるサービス提供をしてもらえるかどうか、能動的に確認しましょう。

外注業者が決まり、業務スタート後の注意点はコミュニケーション体制の確立です。

もし業者との連携が不十分な場合、トラブルやアクシデントが発生した際のイレギュラーな対応や、業務フローの改善などを早期解決できず、物流クオリティが低下してしまう危険性があります。

両社のコミュニケーション担当を明確にし、何か起きた時のエスカレーションフローを構築することはもちろん、定期的にそのフローが実情に沿って機能しているかをチェックすることも不可欠です。

流通加工の中でもシール貼りやタグ付けのような作業であれば単価10円~15円程度、検品や梱包は数十円程度が相場となります。ただ、発注数や商品の形状などによって価格は変動しますので、事前に見積を確認しておきましょう。

まとめ

流通加工とは、商品が生産されてから購入者のもとへ届くまでの流通の過程で、商品の価値を高めるために施す加工全般を指します。ギフトの包装や、アソート商品の箱詰め、商品の組み立てなど非常に多くの加工があります。

流通加工を行うことで、商品購入者がスムーズに商品を利用できるようになり、商品の付加価値及び企業への信頼の向上へもつながります。また、物流作業も効率化されるため、顧客にも物流にもメリットがあるのです。

流通加工は、コスト的にも作業内容的にも作業環境と体制が整っていないと対応が難しい作業です。そのため、アウトソーシングで外部に委託する企業も存在します。

うまくアウトソーシングに頼りつつ、自社の課題解決のために流通加工の改善を検討してください。 

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