●物流DX
コネクテッド5Gは、物流の何を切り開くのか|物流DX
この記事で分かること
- コネクテッド5Gとは何か?
- コネクテッド5Gを導入すると何が変わるのか?
5Gと言えば、最新のスマホの通信技術であることは知っていると思います。
そこに「コネクテッド(connected)」とつくと、何が変わるのでしょうか?
一般的にコネクテッドと言えば、「接続された」という意味で訳されますが、IoT(もののインターネット)の分野では「インターネットに接続された」という意味で使用されます。身近な例としては、スマートスピーカーが分かりやすいでしょう。音声で指示することで、インターネットを通じて、言葉を検索したり、天気情報を取得したり、サブスクリプションで音楽をかけたりも出来るようになりました。今後はより広範囲なものがIoT化されます。例えば冷蔵庫がIoT化されると、冷蔵庫の中にある食材での料理レシピを提示してくれたりするようになります。
では「コネクテッド5G」とは、どのような技術なのでしょうか。
そして、物流の世界でどのような変化を生むのでしょうか。
5Gってどんな技術?
まずは5Gの通信規格の特徴から説明しましょう。
5Gは、大きく3つの特徴があります。
1.超高速
4Gの通信速度の約20倍と言われるほどの高速通信を行います。
2.低遅延
通信における遅延時間(タイムラグ)が、4Gの1/10と言われています。
3.多接続(多数同時接続)
同時に接続できるデバイスが4Gの10倍になると言われています。
そのため、5G通信はさまざまな分野で使用されています。
高速大容量通信としてはARやVRの技術、顔認証システムや警備ロボットの運用で使われています。低遅延としては、無人店舗や無人倉庫、医療現場での遠隔手術で使われています。そして多接続では、自動運転技術やスマートシティへ発展していきます。
ただ、上記のような顔認証システムや警備ロボット、無人店舗や無人倉庫、医療現場での遠隔手術では、一般的な誰でも使える5G回線ではなく、セキュアな独自ネットワークで使用する必要もでてきます。
「ローカル5G」は、通常の通信事業が行う5G通信とは別に自治体や企業が独自に利用できるプライベートネットワークです。
例えば工場でローカル5Gを活用することで、さまざまな機器が遅延なく高速でつなげることができるようになります。有線からも解放されるため、工場内の機器の配置を変更することも容易になります。
公共で利用されるパブリック5Gと違い、パブリックエリアで通信トラブルが起きた場合やネットワークが混雑した場合にも、影響を受けにくくなるといったメリットもあります。
多接続のワイヤレス化が物流にもたらす変化
ではコネクテッド5Gは、物流現場にどのような変化をもたらすのでしょうか。
現在物流現場はデジタル化が進み、様々な作業工程が無人化し始めています。
無人のフォークリストが倉庫内を移動し、コンベア上を流れる商品はRFIDや画像認識技術で自動検知され自動で振り分けられます。5Gの超高速・低遅延・多接続は、ワイヤレスで必要な機器同士のリアルタイムデータ連携を可能にするため、移動機器も含めたより広範囲な機器のデータ連携が可能となります。
そして通信されたデータは、いつどの機器がどのような作業を行ったのかのログデータとなって残せるため、そのデータを分析することで、さらなる業務効率の向上に活用できるようになります。
例えば、これまで定期的に管理していた在庫管理がリアルタイムの自動処理できるようになれば、工場に大量の部品や資材の在庫を抱える必要がなくなります。工場の稼働状況をリアルタイムに判断し納入の必要性をシステムが判断してくれれば、ジャスト・イン・タイムで必要な量を倉庫から納入することができるようになります。最近は少量多品種生産ラインの需要が高まっていますので、工場での在庫スペースの有効活用や、適切量の納入は工場の効率的な生産という視点からも重要になってくるでしょう。
そして、物流業界でコネクテッド5Gが活躍するイメージが強いのは、やはりコネクティッドカーの出現です。
自動運転を進化させるコネクテッド5G
コネクテッド5Gでイメージしやすいものに「自動運転車」があります。「自動運転車」には、さまざまなセンサーが取り付けられており、そのセンサーが感知した情報をもとに運転の各種判断を行ないます。
高速移動している車が危険を感知し判断するためには、高速・低遅延で多接続が可能な5G通信が欠かせません。そして各種センサーが高速移動中も随時危険を検知し、ハンドルやブレーキの制御に活かされています。
既に実証実験は始まっていますので、自動運転のバスやタクシーの映像を見たことのある人も多いと思います。今後自動運転技術が進めば、運転者が不要になるため、移動中の車内では、映画を見たり、これから向かう旅行先の観光情報を検索したりして過ごせるようになるのです。そのように、さまざまな用途でインターネットに高速・低遅延で多接続するため、自動運転車ではコネクテッド5Gが必須となっているのです。
物流に活かすコネクテッドカー
では、この自動運転のコネクテッドカーは、物流にどのような変化を生むのでしょうか?
コネクテッドカーは、内閣府SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)でも力を入れている分野です。現在人手不足と過酷な労働環境が課題となっている運送業が無人化できれば、そのような課題も克服でき、かつ生産性の向上につながります。そして物流は、産業の基盤となっているため、この分野に力を入れているのです。
国家的に取り組みが強化されている分野ですが、物流業界内ではどのような動きがみられるのでしょうか。まずは、現時点の状況から見てみましょう。
今現在サービス化されている技術としては、輸配送のトラックの状況を把握するためのアプリがあります。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する企業が提供しているサービスでは、車両に専用のデバイスを装着することでインターネットに接続され、トラックの位置情報や、目的地への到着予想時刻の確認、運航遅延や危険運転の検知ができるようになっています。それ以外にも、車両の運行管理やドライバーの日報・月報、車両の整備記録もできるようになっています。
その他、自動運転による宅配の実証実験も行われています。
物流拠点から最終的な個人宅へのラストワンマイルと呼ばれる配送を、自動運転の宅配ロボットが行うというものです。自動運転ロボットを開発する企業が行った実験が有名です。車というよりは、小型のカートのようなサイズで、マンションの居住空間内でも走行できるほどの大きさの「宅配ロボット」は、カメラやレーザセンサで周囲環境を 360 度認識しながら最大時速 6kmで自律走行し、荷物を目的地へ届けます。
さらに、宅配ロボットよりも小さな自動運転「台車」が販売され、既に工場内や物流拠点内では自動運転台車が荷物の運搬を行っています。
では近未来的には、どのようなことが考えられているのでしょうか。
将来的には、車同士の接続が検討されています。
目指しているのは、有人で運転しているトラックの後ろに、何台かのトラックを無人で追随させるという発想です。複数のトラックを同じ場所へ移動させる際に、ドライバーは1名で残りのトラックは無人にして、無人トラックは先頭トラックの後ろに追随するというスタイルです。
5G時代には地図も高度化され、3D化されると言われています。
3D化されて道の勾配が分かれば、上り坂ではアクセルを踏み込む、下り坂ではブレーキ制御が必要になるといった予測ができるようになるため、トラックを追随させるうえでもより安全に追随させることができるようになります。
可能性を広げるクラウドサービス
さらに物流システムではAPI(Application Programming Interface システムと外部のアプリケーションをつなげる仕組み)を活用して、さまざまな外部環境と物流システムをつなげようとしています。
先程紹介しました「輸配送のトラックの状況を把握するためのアプリ」からもイメージできると思いますが、各種クラウドサービスで管理したデータを、自社のシステムに取り込みたいというニーズは今後増えてきます。そのため、各種クラウドサービスではAPIを活用して、システム間のデータ連携を重要視しているのです。
RFID(Radio Frequency Identification 電波を使って非接触でデータ読み書きする技術)を搭載したパレットを活用して、パレットの入庫日時や出庫日時を自動で倉庫管理システム(WMS)へ送信したり、社外の物流情報を共有すべき相手に、安全な方法で自社物流システムのデータの一部だけを取り出せるようにしたりしています。
物流はコネクテッド5Gを活用して、さらなる自動化を進めたDXを目指しているのです。
まとめ
最新の5Gネットワークでインターネットにつながれた「コネクテッド5G」は、高速・低遅延・多接続を特徴として、今後の物流の世界を大きく変える可能性を秘めています。
ローカル5Gは、社内や工場といったエリアを限定して使えるプライベート5Gネットワークです。工場や倉庫などで活用すると、これまでの有線のような機器の移動が難しいといった障害もなくなり、高速で各機器が自由に連携できるようになります。
また自動運転技術が進むと、自動運転ロボットが宅配したり、ドライバーが運転するトラックの後ろに自動運転トラックを無人で追随させるという発想もあり、物流の世界を大きく変えてくれる技術となっているのです。
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