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在庫管理に役立つ需要予測システムとは?導入メリットや企業事例を紹介|物流基礎
この記事で分かること
- 需要予測システムとは何か、なぜ必要か?
- 需要予測システムとは何か、なぜ必要か?
需要予測システムとは、過去の実績から市場の需要を予測し、過不足のない在庫管理を可能にするシステムです。以前は担当者の経験や勘に基づいた方法で予測を行っていましたが、ニーズが多様化した現在ではシステムを使用した分析が求められています。
この記事では需要予測システムの概要や予測方法、導入メリットを紹介します。
AIを利用した需要予測についても紹介するので、合わせてお読みください。
目次
需要予測システムとは?
需要予測システムとは過去の販売実績データから市場の動向を予測し、在庫管理を支援するシステムです。時期や天気、市場状況、競合他社の状態といった外部データを加味した上で予測するケースもあります。商品情報、営業情報、出荷(販売)情報といった必要な条件を入力することで対象商品の需要や販売数を予測します。
需要予測システムを活用して需要や販売数を予測することで必要な在庫数を算出し、過剰在庫や欠品のリスクを回避できます。また、発注数や在庫数を適切に管理することで、労働時間や人件費の削減、作業員の負担軽減につながります。膨大な在庫を管理する企業にとって在庫の最適管理は重要な課題の一つであり、この課題を解決するためには需要予測システムは必要不可欠です。
また、IT技術進展によりAIを活用した需要予測システムも登場しています。AIを活用することで過去の膨大なデータを元に需要予測の精度を高めています。
最近「ダイナミックプライシング」という言葉をよく耳にするようになりました。このダイナミックプライシングも、需要に応じて商品やサービスの価格を変動させる仕組みです。様々なデータから、ユーザーの需要が高いと判断した場合には価格を高く設定して高い利益を生み出します。逆に需要が低いと判断した場合には、少しでも多く売れるように価格を低く設定する仕組みです。
※「ダイナミックプライシング」に関しては、こちらの記事もご確認ください
需要予測システムを導入するメリット
では、需要予測システムを導入するメリットは何でしょうか?ここでは需要予測システムの導入メリットを3点紹介します。
過剰在庫や品切れの削減
一つ目は「過剰在庫や品切れの削減」です。
需要の予測が適正に行われていないと、過剰在庫や品切れが発生してしまう可能性があります。過剰在庫の場合はコスト負担に、品切れの場合は機会損失につながります。過剰在庫や品切れ状態が続くと企業経営にも影響を及ぼします。このため、需要の予測を適正に行うことが必要です。
システムによる需要予測は、過去の売り上げ、顧客属性、立地条件、天候といったデータを分析し、適正な在庫量を算出します。
需要予測業務を標準化できる
二つ目は「需要予測業務を標準化できる」ことです。
需要予測には高度なノウハウが必要とされるため、長年需要予測はベテラン社員が担当し、属人化されることがあります。このため、需要予測を担当するベテラン社員が退職すると会社にとっては大きな痛手となります。
需要予測システムを導入すると、過去の販売実績データや市場データを機械学習させることでベテラン社員と同じように需要予測を行えます。このため、個人のスキルやノウハウに頼ることなく、需要予測業務を標準化できます。
精度の高い分析ができる
三つ目は「精度の高い分析ができる」ことです。
需要予測には販売実績データはもちろん、購買者の属性情報の精度を上げるためには膨大なデータによる分析を必要とします。
しかし個人によって情報分析のスキルに差があるため、担当者によっては需要予測結果に大きな差が生じやすく、精度の低下につながります。需要予測システムを導入することで高い精度の予測を行えるようになります。
需要予測システム導入時に注意するべきこと
適切な在庫管理を行うためには欠かせない需要予測システムですが、新たに導入する際には注意すべきことがあります。ここでは需要予測システム導入の注意点を3つ紹介します。
目的・目標を設定する
まずは「何のために需要予測システムを導入するのか?」という目的を明確にします。目的が明確でなければ、「導入したのはいいが、結局は使われなくなった」と無駄な投資になりかねません。こうならないためにも導入の目的を明確にし、それに伴う業務の改善や投資効果の測定に生かすことが大事です。
一般的に、需要予測システム導入の目的は以下のものがあります。
- 製品在庫の削減
- 部品在庫の削減
- 年度予算の最適化
ただ、需要予測システムの導入目的はこれらの「在庫の削減」だけが最終目的ではありません。需要予測システムの導入により重要予測精度を向上することで、「人員配置の適正化」や「予算管理の精度向上」といった、最終ゴールを定めることが重要です。
「目的やゴールを決め、どのように需要予測システムを活用しながらゴールに至るのか?」といったプランの策定につなげていきます。
需要を予測する商品を決める
需要予測する商品を決めるにあたり、需要予測が適している商品、適していない商品を分別しなくてはいけません。
この適切・不適切は商品の生産形態の違いで区別します。
まず、需要予測に不適切な商品は、受注が確定してから生産や仕入れをゼロからスタートする商品です。
需要予測は過去蓄積された販売データや市場データの傾向から予測を立てるため、受注確定してから生産工程がスタートするカスタマイズ性の高い商品は予測には適していません。
需要予測システムは在庫や欠品をコントロールする必要がある商品に対して利用することで効果を発揮します。
つまり、以下のような商品が需要予測に適していると言えます。
■リードタイムが短い商品
生産から販売までのリードタイムが短く設定されている商品は、目先の販売数に合わせて生産管理が必要なため、在庫過多のリスクが高まります。
生産スピードの速さにより調整等の融通がききにくいため、需要予測をすることで適正在庫に貢献します。
■単価が低い売れ筋商品
単価が低い売れ筋商品は、単価が高い商品に比べ、一定数の需要が見込まれます。販売数量が多いということは、日々の販売データが獲得しやすくなります。また売れ筋商品は、欠品すれば売上の機会損失となり、過剰在庫となれば経営リスクになります。そのため、在庫や欠品のコントロールが必要です。
■消費期限が短い生鮮品
生鮮品は過剰生産になれば必ず廃棄になるため、商品によっては日ごとの予測が必要です。
以上のことから、「何でも需要予測システムを用いて需要を予測するのではなく、需要予測に向いている商品を決めて需要予測システムを活用し、適切に運用する」ことが大切です。
需要が変動する外的要因を加味する
市場以外の外的要因で需要が変動することがあります。例えば、気温変動が起因で作物の生育不良に伴う価格高騰です。また、不景気のときは「消費者の買い控えにより予想以上に商品が売れなかった」というのはよくあることです。天気、景気、値引きセールといった外的要因は需要変動に大きな影響を及ぼします。このため、需要予測には市場以外の需要変動要因を加味する必要があります。
また、外的要因を加味するかしないかによっては需要予測が大きく変わってくるので、どの要因に重みをつけるかが重要です。
トライアンドエラーが必要
需要予測システムのデータは、前述したとおり、過去の販売データの数字に加え、市場動向やその日の天気といった、外的要因に左右されます。予測する商品ごとに、どんな要素が需要を変動させるのかを加味した上で予測する必要があります。
これは1度や2度の予測したからといって得られるものではなく、長期的な分析期間を設けることで判断していきます。
このようにトライアンドエラーを繰り返して、自社商品毎に適した予測方法を組み立てていく必要があります。
以上のことから、需要予測システム導入後に即効性のある結果が期待できるわけではありません。
そして、導入の目的は結果の速さよりも、長期的に欠品も廃棄もない、効果的な商品生産を行うことだと留意するべきです。
需要予測システムを導入した企業事例
昨今需要予測システムを導入する事例が増えています。その1社が中国・四国地方で24時間営業の食品スーパーマーケットを展開する企業です。需要予測型自動発注システムと需要予測型キャッシュ・フロー最適化システムを2015年7月から段階的に導入し、2016年には全店舗と物流センターで稼働しました。
同社はサプライチェーン(SCM)のムダを削除するため、メーカー、物流センター、店舗の一連の情報を一元管理することが必要と考え需要予測システムを導入しました。これにより、値下げを強いられた売価変更率が前年比11%減、商品廃棄率は5%減を達成しています。過剰在庫や欠品の削減だけでなく、発注・陳列作業にかかる労力やコストの削減の効果が現れています。また、在庫商品の需要予測を行うことで発注量を調整し、メーカー、物流センター、店舗の一連の物流量を最適化しました。
また需要予測システムの導入で大きな効果をあげているのが、回転すしチェーン店です。
回転すしは、注文を受ける前に売れそうなネタをレーンに流して食べてもらいますが、食べてもらえなかったネタは廃棄となるため、需要予測は非常に重要なデータとなります。今では多くの回転すしチェーン店で、需要予測システムが導入され、システムの指示にしたがってネタを握ってレーンに流す取り組みが行われています。
ある回転すしチェーン店では、過去の注文データから予測したデータを15分後の注文予測とした基本情報と考えた上で、今現在の入店者の来店人数や顧客属性から1分後の注文予測を重ねて判断しているそうです。お皿にはICチップを装着し、リアルタイムでどのネタが人気かの売れ筋を判断し、完全にシステムの判断に委ねるだけでなく、店長の判断も加えた柔軟な対応が可能な取り組みを実施しています。そのようなスタイルを導入することで、廃棄量は75%も軽減できたそうです。
AIによる需要予測も進んでいる
AIによる需要予測も進んでいます。
AI による「需要予測」では、過去の取引データや売上データはもちろん、気象情報、マーケットの動向といった変動要素を機械学習し、変化のトレンドを算出することで次のトレンドを予測するものです。
AI需要予測システムを提供しているベンダーのサイトでは、曜日や気温・降水量などの外的要因の影響を加味したことで、予測精度が最大15%上昇したケースもあると発表されています。
最近では、物流現場の作業工数の予測と、要員配置の最適化を実現するAI需要予測システムも開発されています。単に数値データだけを活用するのではなく、倉庫内の作業の様子を撮影したカメラ映像をAIで解析し、倉庫内の人やフォークリフトの動線に関する改善点を見出すようなシステムも登場しています。
もちろん AI を活用したからといって、最初から正確な予測ができるわけではありません。
このため、様々なデータを学習させ、トライ&エラーで精度を高めていくことが大切です。
まとめ
この記事では需要予測システムの概要や予測方法、導入メリットを紹介しました。
需要予測システムとは過去の販売実績データから市場の動向を予測し、在庫管理を支援するシステムです。需要予測システム導入のメリットは「過剰在庫や品切れの削減」があります。
このようにメリットが多い需要予測システムですが、ただ導入すればよいというわけではありません。導入の際には「目的・目標を決める」ことが必要です。
また、AIの活用も進んでいます。AIを用いた需要予測システムを利用することで、これまで影響が分かりづらかった要因が可視化され、データに基づいた需要予測が可能になります。しかし、AIを活用したからといって、すぐに正確な需要予測ができるわけないため、トライ&エラーで精度を高めていくことが大切です。
またビッグデータ分析をもとに需要予測を行うダイナミックプランシングを使えば、価格を調整して需要を積極的にコントロールし、在庫を減らすことが可能になります。
もし需要予測システムの導入を検討しているのであれば、ぜひこの記事を参考にしてください。
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