●物流基礎
リバースロジスティクスの最適化は企業にどのような影響を与えるのか|物流基礎
この記事で分かること
- リバースロジスティクスとは何か、なぜ重要か?
- リバースロジスティクスのコスト削減方法
近年は、SDGsや環境問題への注目が幅広い業界で広がっています。
その中でも物流業界では、商品が消費者から生産者に向かって流れる「リバースロジスティクス」に新たな価値を生み出す動きがあります。
メーカーや小売業者にとって、返品や回収処理は消費者のロイヤルティを左右しかねない業務です。本記事では、リバースロジスティクスを最適化すべき理由や注意点を紹介します。
リバースロジスティクスに新たな価値を生み出すサービスも紹介するので参考にしてください。
目次
リバースロジスティクスとは?
リバースロジスティクスとは、生産者から消費者へ商品が流れていく通常のロジスティクスの流れとは逆に、消費者から生産者へ向かう物流の流れを指します。「逆転物流」や「還流ロジスティクス」と呼ばれることもあります。
リバースロジスティクスとして商品が通常と逆のルートで戻される要因としては、不良品などに起因する商品の回収、卸売りや販売店からの返品、家電リサイクル法のような法律で回収が義務づけられているリサイクル商品の回収、誤出荷や購入のキャンセルによる商品の回収、購入商品のサイズ変更による商品交換、商品の修理による回収、産業廃棄物処理などがあげられます。
リバースロジスティクスが始まったばかりの頃は、破損、誤配などにより通常とは逆方向に流れることのみが捉えられ、詳しい研究が行われていませんでした。リバースロジスティクスが注目を集めるきっかけとなったのは、James R.Stock教授が1992年に発表した「CLM白書」でした。同教授はリバースロジスティクスを単なる物流の逆流と捉えるだけではなく、素材の代替・再使用、修理による製品の再利用など、リバースロジスティクスは3R(リデュース・リユース・リサイクル)の実現に貢献するとしてシステム化・運用すべきだと提唱したのです。
リバースロジスティクスが注目される理由
近年はEC市場が拡大し、物流の配送量が拡大の一途をたどっています。しかしその一方で、いざ商品が自宅に届いたら「思っていたものと違った」と返品を要求する顧客も増えています。
返品によって発生する返金や回収がスムーズに行われないと、顧客満足度の低下にもつながりかねません。特にBtoC企業の場合、返品・回収の対応が遅れると顧客からの支持が下がり、顧客の行動変化、ひいては売上低下につながる要因にもなります。
つまり、返品・回収がうまく対応できると他社との差別化を実現し、顧客満足度は向上する可能性を秘めているのです。そのため、リバースロジスティクスを構築する企業が増えてきているのです。
リバースロジスティクス対応が難しい理由
顧客へ製品を届ける通常のロジスティクスは作業手順が明確になっているため、比較的容易に管理できます。しかしリバースロジスティクスは、通常のロジスティクスの流れとは真逆であり、いつ発生するかが分かりません。
例えば返品は、商品不具合や商品の売れ残りなどの理由で不定期に発生します。また、売れ残り商品はその日の販売量に影響されるため、物量は日々変わります。このように発生時期が不定期なこと、そして物量が日々変化することから、リバースロジスティクスの構築は企業にとって負担となります。
とはいえ、返品が発生した場合には回収対応が必要となります。もしもスムーズな返品対応ができれば、顧客に良い印象を与え、ひいては顧客満足度の向上にもつながる可能性があります。
逆に顧客がせっかく購入した商品が不良品で、しかも返品対応も悪い場合には、顧客は「もう利用したくない」と不満を募らせることになります。これは企業にとっては機会損失につながります。一方、「返品は必要だったけど、対応は良かった」とユーザーに思ってもらえれば、また利用してくれる可能性もあります。
さらに返品を単に廃棄するだけでなく、再利用することができれば、ビジネスチャンスを生み、環境に配慮した対応ができます。このため、返品を単なる機会損失と捉えずに、返品理由を商品改善・物流の対応改善に生かすチャンスと考えることも必要です。
ただし、返品された商品の状態からリサイクルするのか廃棄するのかを判断するには、判断基準が必要となります。リサイクルすると判断した場合も、どのような手順でリサイクルするのか、その手順を決めておく必要があります。そのようなリサイクル手順の構築も手間と知識が必要となり、進んでいない企業が多いのです。
リバースロジスティクスを効果的に対応する手法は?
実際、リバースロジスティクスを実現するのは簡単なことではありません。特にメーカーにとっては、リバースロジスティクスは通常のロジスティクスの流れに逆行し、回収量やタイミングが日々変わることもあり、自社のみでリバースロジスティクスの体制を構築するのは難しいものがあります。そのため、リバースロジスティクスの導入においては、専門業者に委託する方法があります。
これからのリバースロジスティクスは、業者の選定がカギを握っています。通常のロジスティクスは商品を運ぶだけが業務ですが、リバースロジスティクスは回収した商品をどのように扱うかの判断が必要となります。この判断により回収された商品が、廃棄を逃れ再度在庫として扱われたり、リサイクルとして再び価値のあるものに生まれ変わります。そのため今後、リバースロジスティクス業者は、回収した商品をどのように活用すれば、環境に配慮して廃棄を減少できるかを考え対応できることが重要視されてくると考えられています。
では、現在国内で提供されているリバースロジスティクスのサービスには、どのようなものがあるのでしょうか。一例として、宅配事業者の返品・交換サービスを紹介します。返品された商品の状態からリサイクルを判断するような対応はできませんが、商品の返品や交換を一元管理するサービスです。
例えばエンドユーザーが企業に返品回収の依頼を行ったとき、企業は受付のデータを宅配業者に送付すれば、宅配業者が指定日時にエンドユーザーの指定の場所に向かい、回収を行います。なお、サービスは「回収のみ」「同時交換」「発送のみ」の3つの中から選べますので、返品が希望であれば「回収のみ」で返金の対応を行い、不良品の交換であれば「同時交換」で不良品を回収して同じ商品と交換します。そして修理が必要な場合は「発送のみ」で、修理が完了した商品や代替品の配送を行います。精密機械にも対応しており、輸送方法も通常の輸送方法や精密機器に特化した輸送サービスから選択できます。
ITが返品コストを変える時代に
メーカーがリバースロジスティクスを推進するにあたって気になるのがコストでしょう。消費者や小売店からの返品の配送はもちろん、廃棄にもコストがかかります。さらに商品をリサイクルして販売するには、リサイクルの費用も必要です。
しかし、このリバースロジスティクスのコストを、ITの活用で解決するサービスが登場しています。アメリカのスタートアップ企業は、小売業者が抱えるECサイトの返品・売れ残り商品を自社のECサイトで再販するサービスを立ち上げました。
小売業者は自社が抱える返品商品をサービス提供会社の倉庫に送ります。倉庫担当者は小売業者から送られた返品商品を専用の端末でスキャンして登録します。その際AIによって、預かった返品商品を「販売する」「リサイクルに回す」「寄付する」「廃棄する」のいずれかの方法を選択し、その商品に最適な形で行き先を決定します。販売する場合は、自社が運営するECサイトかその他のサイトで安価に販売します。リサイクルの場合は、提携するリサイクル業者を通じてリサイクル対応を行います。寄付が可能なものは寄付を選択し、極力廃棄量を抑えます。なお、このサービス提供会社が運営しているサイトにはBtoC向けサイトと、BtoB向けサイトの2種類があり、商品が売れた場合は売上に応じてマージンが返品商品を預けた小売業者に支払われます。
このサービスのメリットはAIエンジンが商品を分析し、最適な販売先を自動的に決定するところです。小売業者にとっては再販しても利益にならない返品商品に新たな価値が得られるというメリットが、購入者にとっては欲しい商品を安価で手に入れられるというメリットがあります。
リバースロジスティクスを導入するには
実際に、リバースロジスティクスの対応を強化するには、どのようにすればいいのでしょうか。大きく分けて2つの方法があります。
アウトソーシング
1つ目はアウトソーシングです。
日本国内でも大手物流企業や宅配事業者を中心に、個社のリバースロジスティクスを請け負うサービスを実施しています。そのようなアウトソーシングサービスを活用すれば、コストはかかりますが専門知識を活かした対応をしてくれます。
費用は、実際に荷物を回収するための物流費用と、専用のシステム費用が必要となります。システム費用は、初期導入費・月額利用料ともに数万円程度で、対応した件数分のデータ処理費用が必要となります。
システム導入
アウトソーシングせずに、自社で対応する場合には、管理システムの導入で返品・返金を管理する方法もあります。
在庫管理システム・倉庫管理システムに返品管理機能がついている場合やオプションで装備可能なものもありますので、まずは自社で使用している在庫管理システムの返品管理機能を確認してみてください。
まとめ
本記事では、「リバースロジスティクス」を最適化すべき理由や注意点を紹介しました。「リバースロジスティクス」とは消費者や利用者から生産者へと向かう物流の流れを表し、「還流ロジスティクス」とも呼ばれています。
EC市場が拡大する中で、「思っていたものと違った」と返品を要求する顧客も増えてきています。しかし、不定期に発生する返品対応は難しいものです。一方、返品・回収がうまく対応できると他社との差別化を実現し、顧客満足度が向上する可能性を秘めています。
とはいえ、リバースロジスティクスを自社のみで実現するのは困難です。このため、リバースロジスティクス業者を活用しながら対応することがポイントとなります。
ぜひ、リバースロジスティクスを検討しているのであれば、専門業者の活用を検討してみてください。
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