●物流基礎
EC物流とは?|特徴・課題から導入事例まで詳しく解説|物流基礎
この記事で分かること
- EC物流とはなにか?通常の物流と何が違うか?
- EC物流システムの導入方法と効果
今や生活に欠かせないEC。
コロナ禍を機に導入した企業も多いかと思います。
しかし中には、EC導入の波に乗り遅れてしまった企業や、導入してみたものの上手に活用できていないと悩む企業もあるでしょう。
そこでこの記事では、ECの業務内容やメリット・デメリット、導入方法について解説していきます。
ECを効率的に利用できるよう参考にしてみてください。
EC物流とは?
ニュースなどで耳にすることが増えた「EC」。まずはその概要について解説していきます。
概要
ECとは「Electronic Commerce」の略で、日本語では「電子商取引」と訳されます。本来は「電子情報によって行われる商取引」を指す言葉のため、商品の売買だけでなく広い意味を持ちますが、一般的には「ネットショッピング」を指す言葉として使われています。
このECは、インターネット上で商品を販売する機能を持っています。
顧客が商品を購入し、オンラインで決済が完了すると注文データとなります。いろいろなECプラットフォームがでていますが、その商品の購入・決済を行うのがECの役割です。
商品が購入されると、その注文データの通りに商品を倉庫からピッキングし、場合によってはギフト用のラッピングを行い、梱包して配送伝票を貼り付けて配送します。配送日時の指定があれば、配送伝票にその記載を行います。配送が完了したら、ECシステムの注文のステータスを配送完了にすると、月末や月初などの締め日に売上として入金処理されます。その商品の入荷から販売そして出荷までの一連の流れに対応するのがEC物流です。
BtoBの物流ではEC部分がなく、インターネット上での販売機能がありません。EC物流はBtoBの物流と異なり、一つひとつの注文内容が細かく、大量の注文データを扱うことが特徴です。小規模なECサイトであれば、ECサイトの注文データに対して、手作業で倉庫から商品をピッキング・梱包して配送することもできますが、大規模なECサイトの運営では、手作業は時間がかかりミスも多くなるため、システムを導入した効率化が求められます。
また一部のECサービスでは、販売するためのECの機能とは別に、注文データをもとに倉庫から注文商品の配送をアウトソーシングする「フルフィルメント」というサービスを提供している場合もあります。「フルフィルメント」サービスを活用すれば、アウトソーシング先がECで購入された商品をピッキングし、ラッピングの有無なども判別して、注文商品すべてをまとめて梱包し、配送伝票を貼り付けて発送します。場合によっては、購入商品の問い合わせのコールセンター対応まで依頼できる場合もあります。いわゆるEC物流のバックエンドをすべて対応するサービスです。
今世の中には、Amazon、楽天、Shopify等、様々なECプラットフォームがあり、EC展開している企業ではそのようなECプラットフォームを活用しています。ただ、ECプラットフォームのシステムは、販売と顧客との対応に特化しています。購入された商品を顧客へ配送するための、物流に関する機能が搭載されていないのが一般的です。そこで、ECプラットフォームのデータと、物流システムのデータを連携して、ECでの販売情報と、商品発送の物流に関する情報を一元管理しようという発想から、「EC物流」という考え方が生まれ、「EC物流システム」というものが生まれています。
コロナ禍で外出が規制されるようになったことを契機に、昨今では様々な企業がインターネット販売を取り入れるようになりました。この流れによって需要が急拡大している業界の1つが物流業界です。
「街のお店に商品を買いに行く時代」から「ネットで買った商品が自宅に届く時代」になったことで、物流の在り方も大きく変化しました。本稿では、EC市場拡大によって需要が急増した「EC物流」について詳しく解説していきます。
EC物流が必要とされる理由
EC市場の急速な拡大に伴って需要が高まっている物流業界。生産元から販売店へ商品を届ける「従来の物流」から、ネットでの購入商品を顧客へ直接届ける「EC物流」へ変化したことにより、物流自体の価値も変わってきています。
ネットショッピングの利用者が増えたことにより、EC物流は消費者に対する「サービス」として、ただ商品を届けるだけでなく、どのような付加価値を創出できるかが重要になっています。
「いかにコストを削減できるか」という従来の価値観から「いかに高付加価値のサービスを提供できるか」という価値観へのシフトが、今後の物流に求められるスタンスだといえます。
EC物流の特徴
EC物流には、通常の物流と違うどんな特徴があるのか、代表的な特徴を解説します。
1件あたりの出荷商品数は少ないが配送数が増える
ECは主に、一般消費者の買い物のため一件あたりの出荷商品数は少ないものの、注文数が多くなるため配送数が多くなる特徴があります。
特に大手のECサイトであれば、1日あたりでも数百件から数千件の注文を受けています。
ギフトラッピングの対応
2つ目の特徴は、ラッピングや梱包です。
プレゼントや祝い事をはじめ、ECの利用にはギフト需要が多いため、ギフトラッピングの必要性が出てきます。
ギフト注文では、通常のピッキング作業に加え、ラッピングやメッセージカード、のしなどの対応が必要になります。
顧客属性に合わせた個別対応
EC物流では、顧客一人一人に合わせた販促対応が求められるケースがあります。
顧客の好みや過去の購買回数によるポイント数でランク分けを行い、商品梱包の際にそのタンクに合わせた内容のチラシを同封する、といった販促対応ができる点が特徴です。
このように、顧客の属性に合わせて次の販促施策ができる点がEC物流の強みです。
EC物流を行う業務フロー
本章では、EC物流の具体的な流れについて解説していきます。
基本的な業務フローは、EC以外の物流でも同様のものになります。ただEC物流の特徴として、1つの注文での対応が細かく注文数が多いこと、ギフト対応やキャンセルや返品などの個別対応の必要性があります。また、ECサイトと物流のWMSが切り離されている場合は、商品の入荷に応じて、ECサイト側とWMS側の両方の在庫を設定しないと、在庫数の整合性が取れなくなる危険性があり、このあたりがBtoBの物流との違いとなります。
基本的な倉庫内作業の業務フローは、下記記事で解説しています。
EC物流システムの導入方法
様々な業界で業務のデジタル化が進む中、EC物流の現場においてもデジタル管理システムが多用されています。本章ではEC物流システムの導入のポイントをご紹介します。
選択基準
EC物流システム導入の選択基準として一番重要なのが、自社の物流業務にマッチする機能性を備えているかという点です。EC物流システムには様々な種類があり、それぞれ得意分野が異なります。
物流部門だけでなく、自社のすべての担当部門で共通の基幹システムを利用している場合は、「基幹システムではカバーしきれない機能に特化したもの」を選択基準とするのも1つの方法です。
また、導入にはある程度大きな費用がかかるため、システムの選定は慎重に行わなければなりません。他社での導入実績なども確認し、求めるパフォーマンスが発揮できるシステムを選択しましょう。
EC物流システムの種類を選ぶ
自社に適したシステムを選定するにあたり、その機能ごとに必要なシステムを複数導入している企業もあります。
物流業務の効率化や顧客対応品質向上など、目的に沿ったシステムを選択するためには各システムの機能を理解する必要があります。
受注管理システム(OMS)
複数店舗のEC運用を一元管理できるシステムです。商品情報や顧客情報、ECサイトからの注文情報を管理し、注文確認・入金確認連絡などの顧客対応が可能です。
在庫管理システム
商品の在庫管理を担うシステムです。複数拠点の倉庫の在庫状況を一括管理できます。在庫数の自動調整にも役立ちます。
倉庫管理システム(WMS)
商品の入庫から出庫までの業務を一元管理できるシステムです。商品のロケーション管理や在庫数管理など、あらゆる倉庫内業務を効率化できます。
出荷管理システム
倉庫から商品を出荷する際の業務を効率化するシステムです。出荷指示書・納品書・領収書といった必要書類の作成や、出荷準備状況の管理などが可能です。
配送管理システム(TMS)
商品出荷後、配達完了までの業務を効率化するシステムです。運搬車の配車計画や効率的な配送ルートの計算などに特化しています。
EC機能を拡張させる
上記は、基本的な物流の配送業務で必要となるシステムです。
EC物流の場合は、細かな大量の注文に対応しなければなりません。そのために、ECサービス各社では、様々なオプション対応を行っています。
前述のフルフィルメントは、ECのバックエンド作業を一括してアウトソーシングできるサービスです。その他、注文データをAPI(Application Programming Interface)という技術で、在庫管理システムやWMSと連携させたり、宅配業者への出荷指示のファイルを自動で生成するアプリが追加できたり、注文情報を宅配業者の配送伝票への印刷するアプリなど、EC運用を効率化できるサービスがあります。
ECプラットフォームのシステムは、販売と顧客対応に特化しているため、商品の配送に関しては別のシステムと連携したりアウトソースしたりして管理する企業も増えています。ぜひ、そのようなサービスも活用することをおすすめします。
EC物流の注意点
EC事業を導入するにあたり、まず注意が必要なのは「初期投資の開発コスト」と「運用時の集客コスト」です。前述したとおり、EC物流の管理システムを導入するためにはある程度大きな費用がかかります。
これに加え、集客のためにはECサイトの開発・運用費用がかかるため、多大なコストが発生することを認識しなければなりません。
また、EC物流は配送個数自体は少なくても配送先が多いため、顧客が増えるほど在庫管理・配送場所の管理が煩雑になります。
さらに、付加価値の提供として「ギフトラッピング」や「ブランド専用の梱包」、「流通加工」など、自社の業務負担が膨大になってしまう可能性もあります。
業務が増えるほど受注から発送までに時間がかかってしまうため、かえって顧客満足度が下がってしまう事態になりかねません。EC物流の導入には入念な計画とシミュレーションが必須といえるでしょう。
EC物流の業務改善
ECを導入して間もない企業の場合は、一連の工程がうまく進行しないこともあるでしょう。そのような場合の業務改善のヒントについて解説します。
業務フロー全体の見直し
EC物流の業務改善を図る際は、問題となっている工程だけではなく全体の流れを再確認する必要があります。EC物流業務は全ての工程が密接に連動しているため、問題となっている工程以外の業務で問題が発生していることも多いのです。
例えば出荷作業が効率よく行われていない場合、「保管」の工程を見直すことによって改善されることがあります。顧客情報を分析し、購入パターンから出荷頻度の高いものを出入口付近に配置するなど、他の工程との連動における効率化を目指すことがポイントです。
業務フローをデジタルで管理する
ECを導入して間もない期間は受注が少ないため、アナログによる管理でも運営可能な場合があります。
しかし、やがて大量の注文が入るようになればデジタルによる管理はほぼ必須となるため、事前にデジタル管理へのシフトを計画していなければ業務がパンクしてしまうことも考えられます。
業務フローごとにシステムを導入していくことも可能なため、徐々にデジタル管理へシフトしていくこともスムーズな切り替えの方法として有効です。
アウトソーシングを検討する
変化の激しいEC業界では、常に分析や改善、新しい取り組みの導入を検討しなければならない一方で、ある程度決まった業務をくり返すルーティンワーク化が可能な業務もあります。
物流業務は注文されたとおりに対応を行う業務のため、後者の「ルーティンワーク化が可能な業務」にあたるといえます。
物流業務は、前述したとおり煩雑かつ多大な負担となることもあるため、アウトソーシングすることで結果的にコストを低く抑えられる可能性があります。
特に、事業拡大を図る際には自社の人材を物流業務に充てるより、アウトソーシングしておいた方がスムーズに対応できます。
EC物流における「付加価値の提供」を念頭に置き、丁寧さ・繊細さを意識した物流業務を行う請負業者も存在するため、アウトソーシングは自社全体の業務効率化のため、大いに検討する価値があります。
まとめ
今回はEC物流の業務フローやシステム導入・業務改善のポイントについて解説しました。記事中でも述べたとおり、EC市場の急拡大に伴い、物流の在り方も変化してきています。
物流は顧客へ付加価値を提供する1つの「サービス」として認識され、物流業界の各社が差別化を図るため「付加価値の創出」に注力しています。
しかし、EC物流を導入したばかりの企業の中には、業務量が急激に増加し、注文の処理に追われ、付加価値を提供する余裕がないという企業もあるかもしれません。
このような場合は、作業スタッフを増員して対応するだけでなく、デジタル管理システムの導入やアウトソーシングを活用することも視野に入れて対応することがおすすめです。
EC物流はこれから益々需要が増えていく業界のため、物流における付加価値の提供はさらに進化してゆくことでしょう。従来のやり方に固執せず、「どのようにすればEC利用者にさらなる特別な体験を提供できるか」を考え続けていくことが大切です。
物流業界のDX取り組み事例をご紹介いたします
物流業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)取り組み事例に関するすべての情報を1冊にまとめた資料を無償公開中です。まずはこちらからご請求ください。
資料ダウンロード用のリンクを頂いたメールアドレス宛に送信いたします。
メールをご確認いただき、資料をダウンロードしてください。
人気キーワードで検索