先端技術

MLOps(機械学習基盤)で業務量を予測し、適正人員の配置を可能に

MLOps(機械学習基盤)

この記事で分かること

  • MLOpsとは何か、なぜ必要か?
  • MLOpsの導入方法・活用事例

人材不足が課題となっている物流業界では、限られた人材を適材適所に配置することが重要です。しかし、いつどこの作業で作業量が多くなるかは、熟練の経験がないと予測は難しいものです。

近年話題となっているのが、MLOps(機械学習基盤)という技術を活用して数か月先の業務量を予測し、柔軟な人員配置で繁忙期を乗り越える取り組みです。

今回は、そのような物流の業務量をMLOpsで予測する方法を紹介します。

MLOpsとは

MLOpsとは、機械学習(Machine Learning)と、運用(Operations)を合わせてできた造語です。AIにデータを学習させる「機械学習チーム(Machine Learning)」と、実際のサービスにおける顧客の声に接している「運用チーム(Operations)」がお互いに協力しながら、AIの機械学習の管理体制(機械学習基盤)を築くことを指します。

近年AIの技術革新により、AIの需要予測から販売価格を決定する「ダイナミックプライシング」というサービスもでてきています。ただ、その需要予測の精度を上げるためには、機械学習により市場データや企業特有のデータを継続的に取り込み、日々変化する傾向や特徴を学習させる必要があります。なぜなら、機械学習の予測モデルは時間経過とともに劣化するからです。

優れた品質の予測データモデルであっても、構築時に使用したデータと予測時に使用するデータの質には、徐々に差が生じてきます。時間経過とともにその差が大きくなっていくため、予測モデルは劣化します。

物流現場での稼働量は常に変化しているため、予測モデルのチューニングをせずに使用し続けると、精度の低い予測になっていきます。予測モデルの品質を維持し、予測結果の精度をあげるためには、最新データで予測モデルをチューニングする必要があるのです。

そのために必要とされているのが、機械学習チームと運用チームの連携から生まれるMLOpsなのです。

機械学習プロジェクトにおいてMLOpsが必要な理由

ではなぜMLOpsでは、機械学習チームと運用チームとの連携が重要なのでしょうか。

それは、予測モデルの開発と運用に2つの特徴があるからです。

■予測モデルの品質を保ちにくい

ひとつ目は、時間経過や状況変化によって、予測モデルの品質が保ちにくくなることです。

例えば消費者トレンドは常に変化しています。様々なメーカーから次々と新商品が発売され、売れ筋商品は変化します。物流業務も消費者トレンドに応じて、人気商品の業務量に影響がでてきます。

つまり機械学習プロジェクトは、常にどのような商品が人気なのか、その人気に変化が生じるのはいつ頃なのかなど、継続的に消費者の反応をフィードバックすることが欠かせません。そのため、データを扱う機械学習チームだけではなく、顧客との接点となる運用チームと連携して、日々変化する顧客の反応を分析する必要があるのです。

■プロジェクトメンバーが多数かつ多様であるから

AIの開発には多くの担当者が関わります。そのため、担当分野を切り分けてチーム編成するような場合も多く、チームごとの意見の相違から対立が生じやすくなります。またデータ分析の専門家も、様々な専門知識を有する担当者がいます。データアナリストやプログラマーや運用管理を行うSEなど、それぞれの立場から意見を出してきますので、チーム内でも多様な意見が飛び交い対立が生じやすくなります。

そのため、データ分析に特化した機械学習チームだけではなく、顧客の反応を肌感覚で持っている運用チームとの連携が重要となるのです。データという数値だけ見て対立するのではなく、分析してはじき出されたデータが顧客の反応と相違がないのか、運用チームの持つリアルな感覚もふまえて予測データをブラッシュアップするMLOpsが重要となるのです。

MLOpsによる業務量予測の事例

では、実際にMLOpsによる業務量予測を行っている企業は、どのように対応しているのでしょうか。

その物流企業では、約6,500か所ある物流拠点の数か月先の業務量を予測するため、毎月機械学習モデルを作成しています。この学習モデルから導き出される業務量予測が、経営資源の最適配置とコストの適正化に活用されています。

毎月運用するデータの種類は多岐に渡ります。

各物流拠点の入出庫に関するログデータや、新商品に対応するための商品マスタの変更、季節要因のような変動を扱うための各種設定ファイルなどを更新します。

これらの作業を効率化するためにMLOpsの運用体制を構築しました。

運用チームも参加することで、月次で手動実行していた「データ抽出→前処理→学習→予測→評価」という一連のプロセスの自動化を実現しました。

この自動化により、月次の機械学習モデルの運用が高速化し、余裕を持ったスケジュールでの運用が可能となりました。運用工数が減少したことから運用が安定するとともに、プログラムの継続的な機能開発や機械学習モデルの精度改善も可能になりました。

また以前はチーム体制で協力し合う文化よりも、各担当者が自分の担当領域を専任で対応する文化が強かったため、機械学習モデルの「ソースコードのバージョン管理が担当者に属人化してしまう」という課題がありました。そのため、数人が同時に作業するプロセス管理を参考にソースコードのバージョン管理方法を導入しました。これにより、人為的なミスからプログラムのソースコードが、昔の状態に戻るリスクを対策できるようになりました。

この物流企業は現在、データドリブン経営への転換を図っています。そのため、MLOpsによる業務量予測は経営的に重要な位置づけとなり、業務量予測データが様々な場面で活用されています。ドライバーをはじめとした従業員の生産性の向上や、顧客接点の拡大などによる事業成長が期待されています。

ノンプログラミングで機械学習

これまで、予測モデルは時間経過とともに劣化するため継続的にメンテナンスが必要であること、そのような運用に機械学習チームと運用チームが力を合わせて対応するMLOps環境の構築が重要であることをお伝えしました。

ただ、機械学習は専門知識が必要なため、対応が難しいとあきらめている企業もあるかもしれません。ただ機械学習を、ノンプログラミングで対応できるツールも存在します。

GUI(Graphical User Interface)で必要な項目をドラッグ&ドロップで指定してアルゴリズムや各種パラメーターを設定できるようなツールです。

クラウドサービスの中には月額数千円程度で利用できるものもありますので、そのようなツールの使用を検討してみるのもいいかもしれません。

また、そのような専門ツールを扱う専門人材がいないという企業もあるかと思います。

その場合は、自社で社員として採用するのではく、外部の専門企業に委託したり、専門人材に業務委託する方法もあります。難しそうだからと最初からあきらめずに、専門家との協業を検討してみてはいかがでしょうか。

今回は、物流の業務量をMLOpsで予測する事例を紹介しました。

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