物流DX

物流はDXでどう変わるのか|物流DX

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この記事で分かること

  • DXまでの物流進化の歴史
  • 物流DXの導入事例と将来の方向性

最近「DX(デジタルトランスフォーメーション)」というキーワードをよく目にします。DXとは、簡単に言えば「AI(人工知能)やIoT(物のインターネット)などの新しいデジタル技術を使って生産性を向上し、社会や企業の課題を解決して業務改革を行うこと」です。

かつて物流の世界は非常にアナログで、現場担当者の職人技で成り立っていました。しかしAIの技術革新とともに、物流の世界はデジタル化・ロボット化が進み、大きく変化しています。今回は、物流がDXによってどう変わるのかを解説していきましょう。

物流の進歩

いきなりDXの話をする前に、これまでの物流の進化についておさらいしてみましょう。

最近は「ロジスティクス4.0」という言葉も語られています。まずは「ロジスティクス1.0」から「ロジスティクス4.0」までの変化を簡単にまとめましょう。

「ロジスティクス1.0」=輸送の機械化の時代(1900年頃~)

大昔、輸送は馬やラクダなどの動物を利用していました。20世紀になると、やがて自動車や鉄道や船舶などが出現し、トラックや鉄道や船舶で大量輸送が可能となりました。

「ロジスティクス2.0」=荷役の自動化(1950年代~)

1950年代に入ると、第2次世界大戦などでフォークリフトやパレットなどが活用されるようになります。荷物をパレット単位で共通サイズ化することで、船舶のコンテナの中に効率よく搬入出来るようになり、海運から陸運への橋渡しもスムーズにできるようになりました。

「ロジスティクス3.0」=管理・処理のシステム化(1980年代~)

1980年代になると、コンピューター技術が進化します。在庫管理システムは、入庫・出庫の数をシステム管理することで、紙の台帳が不要となりました。また輸配送管理システムはトラックの配車状況を管理し、NACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)による輸出入の税関の手続きをデジタル化してきました。これまで人間がやってきた事務作業がデジタル化されてきたのです。

「ロジスティクス4.0」=物流の装置産業化(現代~)

そして現在、倉庫にはロボットやシステムが導入され始めています。かつての現場担当者の経験だけに頼っていた仕事が、ロボットやシステムに置き換わりつつあります。IoTやAIの出現により、現場職人の経験がロボットで対応できるようになってきたのです。そのようなロボットなどによる自動化・システムによる数値化された時代が「ロジスティクス4.0」です。

物流における倉庫内作業の基本的な業務フローは、下記のようになります。

【倉庫内作業の基本的な業務フロー】

「入荷・入荷検品→入庫→保管→出庫・仕分け→流通加工→出荷検品→出荷」

商品が倉庫に届いたら内容を検品で確認し、倉庫管理システム(WMS)に登録して入庫します。保管されていた商品が輸送されるようになったら、出荷先ごとに仕分けされて出庫作業が開始されます。梱包などの流通加工が必要な場合は流通加工を行い、出荷先ごとの出荷内容に間違いがないかを出荷検品したら、無事に出荷されます。

これらの各工程が手作業から自動化へシフトしているのが「ロジスティクス4.0」時代の物流となります。

物流業界の課題

そのような技術進化の中で物流DXについての話をするには、DX発想のベースとなる「課題解決」について触れる必要があります。今現在の物流業界の課題についてまとめてみましょう。

技術進化が目覚ましい物流業界ではありますが、物流業界には、まだまだアナログな人が対応する部分での課題があります。

【小口配送の増加】

物流業界ではEC(インターネット通販)の拡大により、個人向けの小口配送量が拡大しています。ECサービスが取り扱う商品数やジャンル数は増え続け、その膨大な商品在庫から適切な注文の商品をピッキングして梱包し、配送しなければなりません。そのため、小口配送業務への効率化が重要視されています。

またECの配送では、顧客の不在などによる再配達などの問題もあり、配送の多頻度化も重なってドライバーの負担が増大しています。

【人手不足】

帝国データバンクが発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2019年)」によると、「運輸・倉庫」は10業界51種類の中で6番目に従業員が不足しているという結果が出ています。ECの拡大により物流のニーズは高まるものの、それを処理する人材が不足しているということです。

【従業員の負担増大】

上記のように、小口配送の増加や人手不足は、従業員の業務を増加させます。配送物は小口でかつ量も増えています。それらを処理する倉庫スタッフが足りていなければ、スタッフひとり一人の負担は増大することとなります。

「ロジスティクス4.0」によるロボット化・システム化が進むことで、物流業界の増大する小口配送への対応と人手不足の解消という課題解決につなげようとしています。具体的には、どのような変化が起きているのでしょうか。

デジタル技術が物流に起こす変化

デジタル技術が物流に起こす変化

これまで物流業界は、ベテランスタッフの経験に頼る非常にアナログな業務が中心でした。

しかしAIの技術革新により、人間でなければ対応が難しいと考えられていたベテランスタッフの経験値が、データ化されはじめたのです。それにともない、様々な業務がシステムやロボットに置き換わっています。

【ロジスティクス内の作業の自動化・無人化】

人材不足に加えて従業員の作業負担が増える物流業界では、作業の自動化・無人化が進められています。上記課題であげた「人手不足」への対応です。

ロジスティクス内のピッキング作業や仕分け作業は、ロボティクスに置き換わりつつあります。疲れることのないロボットが、ベルトコンベアの移動スピードに合わせて止まることなく正確に作業します。また施設内のモノの移動は、無人フォークリフトが必要なモノを自動で取り出し、必要な場所へ届けます。

画像認識技術や各種センサーを活用したAI技術革新が、これまで人間でなければ対応が難しいと言われていた作業の自動化・無人化を進めました。

EC需要の高まりによって増える小口配送も、ロジスティクス内の自動化・無人化により、効率的でかつ正確に出荷対応ができるようになってきています。

【システム化された管理業務】

また、かつて手作業で帳簿に記載していた在庫数や保管場所の管理は、在庫管理システムの登場により自動化されました。ワイヤレスのハンドリーダーでバーコードやRFIDタグを読み込むだけで、入出庫の管理ができるため、倉庫内を移動しながらどこでも作業ができるようになりました。リアルタイムでデータが書き換えられるため、誰もが今現在の正しいデータを確認できます。

日々の配車計画も、運行管理システムのAIが自動で指定してくれます。かつてエクセルで各ドライバーの稼働状況を管理し、ドライバーの勤務時間に応じたルートに配置していた作業は、今ではAIが勤務時間の管理なども含めて自動で行っています。最短の輸送ルートも、自動で指定してくれます。またドライバーが手書きで記載していた日報や月報なども、運行計画をもとにシステムが自動で作成してくれます。

また、ECの拡大による小口配送の増加に対しては、宅配ドライバーがどの手順で荷物を届けるのが最も効率的かをAIが判断し、トラックへの荷物の積み込みをどの順序で行うべきかを指示するシステムも登場しています。また、再配達をできるだけ防ぐために、配達先の電力使用量をAIが分析し在宅かどうかを判断するようなシステム開発の取り組みも進められています。

「宅配効率化システム」の記事へリンク ※後日公開

これらのシステム対応により、ロボティクスにより倉庫内作業だけでなく、小口配送の増加や輸配送業務における現場スタッフの負担は軽減していますました。そのためこのようにロボティクス・システムが効率化できる分野を広げることで、人間が対応すべき業務を見直して、マンパワーの必要な部分に従業員を集中させることにも役立っています。

新たな価値を生む物流DX

しかし物流DXは、単に現場作業をデジタル化・ロボティクス化して生産性を向上するだけではありません。物流の技術進化を、新しい価値創造に活かす取り組みが進んでいます。それが、経営視点から考える物流DXです。

物流は、多くのサプライヤーが連携して機能している業界です。

それぞれのサプライヤーには、それぞれの管理システムがあり、各サプライヤーが個別に自社システムを管理しています。そのためサプライヤー間では、受発注業務が発生しますし、他社の管理している状況を把握することが難しくなっています。

そこで個社のDXの先には、サプライチェーン全体でのDXが進められようとしています。

例えば連携する全サプライヤーが、ブロックチェーン技術を活用して一気通貫したシステム管理を行うという発想もでてきています。ブロックチェーン技術を活用することで、サプライチェーン全体がオープンなシステムとなり、物流の川上から川下まで全体の動きを可視化できるようになります。さらにサプライヤー間の受発注業務もブロックチェーンで自動化できるので、各社が事務処理などの業務においてもミスの軽減と効率化を実現し、生産性の向上に役立てることができます。既に海外では、海外輸出の各種手続きなども、ブロックチェーンを使って簡素化できないかという議論も出てきています。

また、AIを活用した需要予測も進化しています。これを活用して、物流費用をダイナミックプライシングで需要に応じて変動させるという取り組みも海外では進んでいます。

ダイナミックプライシングは、繁忙期などの需要の大きい時期には料金を高く設定し、閑散期などの需要の少ない時期には料金を低く設定するような変動料金制度です。

海外のダイナミックプライシング物流のケースでは、単に季節的な要因だけでなく、地域や荷物の特性さらに顧客の行動などを考慮して運賃を算出するシステムも開発されており、ひとつのシステムに対して2,000社以上の物流企業が提携しているということです。

物流DXは、既に物流現場の無人化・自動化というだけでなく、物流ビジネスを経営視点から変革する段階にきています。そして、これまでになかった新しい価値を生み出そうとしているのです。

今後当サイトでは、このような物流DXでの取り組みについて紹介していきます。

物流DXに関する記事は、こちらの一覧ページでご確認ください。

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