物流DX

再配達を減らすために 宅配・配送業務を効率化するシステム|物流DX

宅配効率化システム

この記事で分かること

  • 再配達問題とは何か?
  • 再配達問題を解決するサービス事例と導入方法

近年では消費者の買い物のスタイルが大きく変化し、インターネットを駆使して外出せずともあらゆるものが手に入るようになりました。しかし、生活の利便性が向上する一方で、ある問題が国全体として重要視されるようになっています。

その問題とは、運送業界における「再配達の増加」です。

再配達の増加により、昨今の運送業界は様々な課題を抱えています。また、運送業界だけの問題に留まらず、地球環境にも影響を及ぼしているのです。

当記事では、運送業者の観点に加え、ユーザー側の観点からも「再配達の削減のためにできること」について解説しています。ぜひ、参考にしてみてください。

運送業者・宅配業者の現状の課題

本章では、運送業者・宅配業者が抱えている課題について解説していきます。

ドライバー不足、減らない残業

昨今では、インターネットのさらなる進化や、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う「巣ごもり消費」増加により、ECの需要が急激に拡大しています。そして、EC市場拡大に伴い、業務に大きな影響を受けているのが運送業者・宅配業者です。

小口配送増加による配送ルートの複雑化が進み、現在、運送業界における多くの企業では配送ドライバーの確保が間に合っていません。公益社団法人鉄道貨物協会によると、2028年度には27.8万人超の配送ドライバー供給不足が起こると予測されています。

表

出典:本部委員会報告書 – 鉄道貨物協会

このように配送ドライバーの人手不足が深刻な状況の中、とりわけ問題視されているのが「再配達による業務負担」です。

2015年10月に国土交通省は「年間1.8億時間が再配達の労働時間として費やされている」「年間でトラックドライバー9万人相当の労働力が再配達に費やされている」と発表しました。

この発表から6年経過した2021年10月の調査においても、宅配事業大手3社の総配達件数の内、11.9%が再配達となっており、依然として大きな問題となっています。

物流業界では、2024年4月1日から働き方改革関連法における「自動車運転業務」の特例期間が終了するため、ドライバー不足などの様々な問題が発生すると言われており、これらの問題を「2024年問題」と呼んでいます。また物流業界の労働環境を改善するために「ホワイト物流推進運動」も進められています。

「2024年問題」「ホワイト物流推進運動」については、こちらの記事で解説しています。

表

出典:報道発表資料 – 国土交通省

業務の属人化

昨今の運送業界では、人手不足だけではなく「業務の属人化」も解決すべき課題となっています。その理由としては、ベテランドライバーと新人ドライバーの業務効率の差が顕著になってきているためです。

各配送先を効率よく巡回する近道や、特定のルートが混雑する時間帯の回避といった、ベテランドライバーは経験によって蓄積された知見を活かして配送時間を短縮しています。

しかし運送業界の現況としては、このような知識が新人ドライバーには継承されていないため、業務効率に大きな差異が生じているのです。

今後も小口配送の増加に伴い、配送ルートはさらに複雑になっていくと予想されます。そのため、現在の業務効率を維持するためには、ベテランドライバーが培ったノウハウを多くのドライバーに継承することが急務といえます。

紙を用いたアナログで業務効率化が低下

宅配・配送業務をデジタルに移行できないまま、アナログ作業を続けることにより、業務効率に問題を抱えている配送業者が散見されます。

物流業界では、発送元から配送先へ品物が届けられるまでに複数の紙伝票を取り扱います。この紙伝票の取り扱いにおいて「印刷・作成」「押印作業」「仕分け・保管」の作業が必要となるため、1日の業務中に一定の時間を費やさなければなりません。

また、紙伝票によりアナログ管理していることで、過去の運送履歴の照会時に多大な稼働がかかってしまう点も業務効率低下のポイントです。

さらに、新型コロナウイルス感染症流行に伴い、紙伝票の接触に抵抗感を持つ従業者も増えているため、伝票のデジタル管理への移行が注目されています。

配送計画に膨大な工数がかかる

配送先が複数あり、ドライバーを複数抱えている場合、配送ルートの計画が複雑化する中で、ベテランドライバーの経験に頼るアナログな手法を取る会社が多く見られます。

これにより、配送計画に膨大な工数がかかっている場合があります。

さらに、属人化が進むことで配送計画の作成はより困難になります。ベテランドライバーだけが道路事情を熟知していることにより、当該者が休職・退職してしまうと配送計画を作成できなくなってしまいます。

今後のEC市場拡大により、配送先はさらに多岐にわたることが予想されるため、人の手では配送計画の作成が追いつかなくなる可能性があります。

ドライバーと運行管理者の連携不足

宅配・配送業務を効率よく行うためには、ドライバーと運行管理者の連携が重要です。

運行管理者は渋滞、事故、急な予定の変更、遅配、待機時間の延長があった場合、予定とずれているのかといった、配送の進捗確認を行います。

ドライバーとの連携がきちんと取れていない場合、これらの進捗管理に支障をきたすため、顧客への重要な連絡が遅れてしまうことになりかねません。

また、連携不足によりドライバーの無駄な待機時間の発生にもつながります。運行管理者からの指示が遅れることにより、指示待ちのドライバーは待機せざるを得ない状況になってしまうのです。

さらに、運行管理者がドライバーの動向を把握できなくなってしまうことによるトラブルも散見され、的確な指示が出せない状況になることも問題視されています。

宅配・配送業務の効率化を実現できるシステムの種類とサービス例

宅配・配送業務効率化システムの種類

運送業界の課題を解決するため、様々な企業がデジタルシステムの開発に取り組んでいます。本章では、システムの導入によって配送業務の効率化に成功した事例をご紹介します。

AIが電気使用量から在宅を判断するシステム

一定時間ごとに電気使用量を計測するスマートメーターのデータを利用し、AIが在宅判定を行うシステムが運送業界で注目を集めています。

この在宅判定システムを用いてフィールド実証実験を行ったところ、不在率を20%改善できたとの発表がありました。さらに、この削減効果は配送業の経歴に係わらずどのドライバーでも同様の結果が得られたとされています。

しかし、不在率は改善されましたが、不在宅回避を優先して配送ルートを設計してしまうため、配送車の走行距離とドライバーの稼働時間が増加してしまいます。不在率を改善したまま走行距離とドライバーの稼働時間をいかに減少させるかが今後の改善ポイントです。

最適配送ルート計画AI

次に、配送ルート作成にAIを導入している事例をご紹介します。こちらの事例では、スマートフォンに配送先と荷物の情報を入力するだけで、AIが最適ルートを地図上に表示してくれるというシステムを利用しています。

このシステムを導入した会社では、従来、配送の時間指定や交通事情を考慮して一つ一つの配送先を地図に記してルート作成を行っていたため、毎日多くの時間をルート作成作業に費やしていました。

これらの稼働をAIが代替することにより、配達時間・配達個数の効率は2割向上すると見込まれています。さらに、AIは配送実績データが蓄積する度に、より精度が増していくため、使えば使うほど効率化が期待できます。

配送計画サービスのモニタリング誘導ページ

進捗管理システム

続いて、配送ドライバーと運行管理者の連携を強化するシステムについてご紹介します。このシステムは導入実績が2000社を超えており、様々な業界の配送効率を改善しています。

配送ドライバーは、あらかじめ専用システムをインストールしたスマートフォンを携帯するだけで、配送進捗をリアルタイムで運行管理者に知らせることができます。

渋滞により遅延しそうな場合も、わざわざ運行管理者に電話をかけなくても状況を察知できるようになっています。

ドライバーは、配送車での走行中にスマートフォンを操作して連絡する必要が無いため、運転に集中することができます。また、運行管理者側はドライバーの動態をリアルタイムで確認できることにより、遅延が発生した場合は荷主へすばやく連絡することができます。

配送計画システム

「ドライバーにとって実行可能な計画を作ること」を主軸にシステム開発を行った会社の事例をご紹介します。

こちらの会社では、ドライバーが経験により培った知見を取り入れ、現場においてしっかりと実効性のあるシステムを開発することにこだわっています。

一般的なカーナビとは異なり、ベテランドライバーが実際の業務で配達した実績をベースに効率的な走行ルートを徹底的に分析し、データに落とし込むことで、現地の渋滞情報や細かな抜け道などのデータが活用されたルートが案内されます。そのため、経験の浅いドライバーでも効率的に業務を行うことができるシステムが完成しました。

複雑な配送計画も、配送車の出発時間を入力するだけで数分で出力できるため、非常に有用なシステムです。

再配達を減らすためにユーザー側にできる対策

再配達を削減するためには、ユーザー側の取り組みも必要です。運送業者がどれだけ対策をしても、再配達にならないよう配慮するユーザーの意識がなければ、いつまでも再配達は無くなりません。

ユーザー側にできる対策としてご紹介したい取り組みの1つが、「宅配ボックスの設置」です。宅配ボックスとは、受取人が不在の際にも荷物を受け取れるよう、玄関付近に設置しておくアイテムです。

近年では様々な盗難対策がなされた宅配ボックスや、場所を取らないエコバッグのようなバッグ型のものが提供されているので、環境に合わせて選択できるバリエーションが増えてきています。

続けてご紹介したい取り組みは「コンビニ受け取りや宅配ロッカーの利用」です。ECサイトや発注する商品によって条件が異なりますが、配送先として最寄りのコンビニや宅配ロッカーを指定できることがあります。

自宅を不在にしていることが多い場合、コンビニや宅配ロッカーを配送先に指定しておけば、一定期間、荷物を保管してくれるので、ユーザーは都合の良いときに荷物を受け取りに行くことができます。

まとめ

今回は、再配達削減を中心とした宅配・配送業務の効率化についてご紹介しました。EC需要の急拡大により大きな影響を受けている運送業界は、様々な課題を抱えています。この課題は近い将来さらに深刻化すると予想されるため、早めに対策を考える必要があります。

様々な課題が存在する中、何年も前から問題視されているのが「再配達による業務負担」です。国土交通省も「重大な社会的損失」として度々調査を行っている課題ですが、未だに解決されていないというのが現状です。

今後、配送ドライバーの供給不足が加速していく中で、この課題解決の鍵となるのが、AIや不在判定アルゴリズムを搭載したデジタルシステムの導入です。

特に、記事の中でも紹介している「電気使用量データによる不在判定アルゴリズム」を用いたシステムは、実証実験によって有効性が証明されているため、運送業界において非常に注目を集めています。

様々な業界において「DX化」が進む中、運送業界にも大きな改革をもたらすことが期待されます。

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