●先端技術
オムニチャネル戦略に必要とされるOMSとは|先端技術
この記事で分かること
- OMSとは何か?なぜ必要か?
- OMSの導入方法と効果
ECを運営している企業では、自社ECに加えて複数のショッピングモールへも出店して、管理が煩雑化しているというケースもあると思います。
近年は、ECのようなデジタル分野だけでなく、店舗などのアナログ環境においても顧客との接点を有効に活用するための顧客管理「オムニチャネル戦略」が進んでいます。「オムニチャネル」とは、店舗やECサイト、SNSといった、あらゆるチャネルから顧客との接点を創出し、あらゆる販売経路で一貫したサービスを提供する販売戦略のことをいいます。ECのようなデジタルだけ、特定の店舗だけという限定されたチャネルのみで顧客管理をしていると、顧客の見えない部分が多くなります。しかし、その見えない部分に顧客との重要なコミュニケーションチャンスがあるかもしれません。そのチャンスを見過ごさないために、顧客との接点のあらゆるチャネルを有効活用する「オムニチャネル」という発想があり、その「オムニチャネル」を有効活用するために、専用のシステム「OMS(注文管理システム)」が構築され、注目されています。
今回は「OMS」導入のメリットや、オムニチャネル戦略について解説します。
目次
OMS(Order Management System)とは
「OMS」はOrder Management System の略称で、日本語では「注文管理システム」と訳されます。ECサイトを中心とする販売管理において、顧客情報・商品情報・在庫情報・注文情報を一元管理します。また、お客様への注文管理メールの送受信もできるため、顧客とのやり取りを合理的に一括管理できます。
通常のECシステムにも、同様の機能が設けられているのに「OMS」が注目される理由はどこにあるのでしょうか。
それは、「複数システムのデータを一元管理できる」というメリットがあるためです。自社ECサイトを開設し、さらに複数のECモールへ出店しているようなケースでは、それぞれのECサイトでの注文に対しては、それぞれのECシステムで対応する必要があります。また在庫管理もそれぞれのECシステムでしか管理できないため、特定商品の在庫が無くなれば、すべてのシステムにログインして在庫数量を変更する必要がでてきます。
しかし、この「OMS」を活用すれば情報を一元管理できます。
自社ECに加えて複数のECモールへの出店やオムニチャネル対応で対応チャネルが増えて管理が煩雑になってきた場合に、業務を効率化できるという魅力があるのです。
オムニチャネル戦略とOMS
最近は、オムニチャネル戦略によりECだけでなく、店舗などデジタル分野以外での顧客管理も進められています。企業が顧客に対してサービスを提供する際に、デジタルでの接点や実店舗での接点もコールセンターでの接点なども共有できれば、提供できるサービスの質が向上するためです。そのため、実店舗とECの境をなくしたショッピングの形として、様々な企業で取り組みが進んでいます。
オムニチャネルが必要とされる背景には、下記のようなケースへの対応があります。
顧客が実店舗を訪れて、気に入った商品を見つけたものの、気に入った色やサイズの在庫が切れていたようなケースです。かつては、近隣の他店舗に在庫があるかを確認して、そちらへ案内するといった対応を行っていましたが、それでは顧客への負担も大きくなり、その店舗の売り上げも機会損失します。
そこで接客した店員がその場で在庫を確認し、その場で売上代金を決済して商品を顧客の自宅へ配送する対応を取れたとします。そうすることで、顧客は他店舗へ移動することなくお気に入りの商品を入手でき、店舗担当者も自分の店舗売り上げとして販売することが可能となります。
このようなオムニチャネル戦略を取ることで、下記のようなメリットがあります。
【顧客満足度の向上】
上記の例のように、仮に在庫切れで販売機会を失いかけたとしても、別の方法で販売できるようになります。また最近は、商品の体験だけを目的とした店舗を出店し、購入はECへ案内するという企業もでてきています。そもそも販売を直接的な目的としていないため、顧客も体験だけを目的に入店しやすくなり、接客手法も商品価値を伝えることに特化できます。気軽に商品を体験していただくことで、企業や商品の認知を上げ、次の商品との接点で更なる興味喚起を誘えるきっかけが作れるのです。
【顧客個別のマーケティング】
オムニチャネルを活用すると、顧客がいつどのようなタイミングで企業や商品との接点が作られ、その後どのような対応を繰り返して、どの商品を購入したかを追いかけることができるようになります。
かつてのように、店舗は店舗での顧客管理、ECはECだけでの顧客管理となっていた場合には、ひとりの顧客が様々なチャネルで対応した内容を、一括して分析することができませんでした。しかしオムニチャネルで顧客情報を一元管理することができるようになると、誰がいつどこでどのような対応をしたのか、その次のタイミングではどこでどのような対応から商品の購入に至ったのかを追いかけることができるようになるのです。
SNSの情報をきっかけに店舗を訪問したのか、メールマガジンのクーポンを使ってECで商品購入をしたのか、様々なマーケティング施策のどの施策に、どのような方が反応しているのかが一気通貫して見えてくるのです。
顧客の好みが多様化している今、顧客に最適な手法で対応することが求められています。そして、多様なチャネルの顧客情報を一元管理するために、OMSの導入が求められているのです。
OMSの機能
一般的に「OMS」には以下のような機能があり、様々な販売チャネルから入ってくる受注情報を一元管理できます。どのような内容の注文がどこから入ってきたのかを、まとめて確認し、全てのチャネルの在庫を一括管理できるのが特徴です。
【一般的なOMSの機能】
・受注管理
・見積管理
・発注管理
・商品マスタ管理
・在庫管理
・顧客情報管理
・アカウント管理
・データ分析機能
BtoCのECの場合には、価格が決まっているため見積を使用しない場合も多いと思いますが、BtoBの場合には見積管理も重要な機能となります。営業が発行する見積書の作成や、仕入れ先への発注管理機能がついている場合も多く、注文に関する取引を一元管理します。
また一般的なECモールやECシステムとの連携が可能となっており、API(Application Programming Interface)を通じて各システムとのデータ連携が行えます。またデータ分析機能では、チャネルごとの売り上げ分析ができるようになっており、ひとつのシステム上で複数チャネルの売り上げ状況の比較が、同じフォーマットでできるようになります。
わざわざ各サイトの売り上げデータをダウンロードして、エクセルで集計して手作業でレポートを作成する手間が軽減できます。
OMSを導入する際のメリット/デメリット
ではOMSを導入するメリット/デメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
メリットとしては、業務の効率化とミスの削減があげられます。
これまで販売チャネルごとに複数システムで管理していたものが、一元管理できるようになるため、業務効率が向上します。さらに在庫管理では、OMS導入前には複数システムに対してそれぞれ同様の対応を行う必要がありました。在庫設定の作業途中に顧客対応といった他の対応をしたために、特定のサイトだけ在庫情報の対応を忘れてしまい、注文が入っても発送ができずにお客様にお詫びが必要になるような経験をされた担当者も多いと思います。しかし、このようなミスも軽減されます。
さらに多様なチャネルを通じた顧客の分析ができるため、高度なマーケティング施策が可能となります。
このように作業効率を上げて高度なマーケティング施策を実施することで、EC担当者が販売戦略を練り、お客様と向き合うための時間を増やすことができます。顧客に対して新商品の案内をメールしたり、一度ご購入いただいたものの2度目の購入をいただけていないお客様に対してクーポンを発行して再来店を促す対応を行ったりする時間も確保できるようになります。お客様にご指摘いただいた商品説明文の細かな表現を修正することも、煩雑な管理作業の中では対応する余裕がなかったかもしれません。
そのような顧客対応を行うことが、顧客満足度の向上につながります。
一方デメリットとしては、導入にかかる労力やコストが大きいことがあげられます。
様々な販売チャネルからデータを取り込むための初期設定や、イレギュラな自社特有の事情をどのように対処すべきか検討し対策するなど、新システムを導入する際には、確認すべきこともたくさんあります。また新システムの実装前には、通常業務に加えて新システムのテストも必要となります。もちろん、新システムの使用方法を社内に周知することも手間のかかることです。
ただ、そのようなデメリットを超えるだけのメリットがあるからこそ、OMSは注目されているのです。
OMSは機能に幅があるため、導入費用も幅があります。
ある程度の機能が揃っていて手軽に導入できるようなものですと、初期費用で50~80万円程度、月額の運用コストが10~15万円程度、さらに実店舗数により従量課金というような予算規模での導入となります。
OMS導入の際のポイント
最後に、OMS導入の際に注意すべきポイントを記載します。
OMSは、導入目的によって必要機能が異なってくるため、選択肢はたくさんあります。そのため、まだ主要な代表的と呼ばれるシステムは登場していないため、以下のようなポイントに注意し、自社に適したシステムを選択してください。
【自社の規模とマッチしているか】
ECサイトといってもその使い方や規模は様々です。
BtoC事業なのかBtoB事業なのかで、必要な機能は大きく変わってきます。
また、業種によっても使い方の特性は変わってきます。自社のビジネスにマッチした機能があるのか、また必要以上に高機能になっていないかを確認してください。
導入にあたっては、必要機能をリストアップして、必要機能を備えたシステムを選定する必要があります。大は小を兼ねると考え、多彩な機能が備わったシステムの導入を検討すると、高価であるとともに使用方法も高度なケースが多いものです。足りない機能はオプションで付けられるケースもあるので、システムベンダーに確認するといいでしょう。
【既存システムと連携が可能か】
そして重要なのが、既存システムとの連携が可能なのかの確認です。
OMSは、ECシステムの上位に位置するシステムです。複数のECシステムと連携してデータの入出力ができなければなりません。既存システムが連携可能なのか、単にデータが取り込めるだけでなく、在庫データを一括で変更できるのか、顧客とのメールでのやり取りは、どのECの顧客とのやり取りかを明確に切り分けられるのか、実際の運用作業に当てはめて、対応可能かを確認しましょう。
【自社の業務フローに適しているか】
そのような実際の運用作業に当てはめた際に、できなくなるタスクがないかも確認が必要です。ECの運用では、イレギュラな自社特有の対応をしている場合があります。そのようなイレギュラ対応が可能なのか、可能な場合には業務フローを変える必要があるかどうかも確認するといいでしょう。
業務フローが変更されると、マニュアルの変更も必要となりますし、その変更により他の業務に対する影響がどの程度出るかも確認する必要があります。例えばOMS導入でシステムを一元管理できるようになったものの、他システムからデータを取り込む際に煩雑な手続きが必要になるような場合は、そこでミスが発生する可能性もあります。そのようなケースがある場合は、他社のシステムも比較検討してみましょう。煩雑な手続きが不要になる場合もあるかもしれません。
自社の業務フローに適しているか、使いやすいインターフェイスになっているか、既存の担当者が使いこなすことができそうかといった視点でも確認してください。
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