●先端技術
コネクテッドロジスティクスは、物流をどう変えるのか|先端技術
この記事で分かること
- コネクテッドロジスティクスとは何か、なぜ必要か?
- コネクテッドロジスティクスの導入方法・活用事例
近年物流業界では、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが進んでおり、様々な機器とシステムが連携して作業の自動化が進んでいます。
そのような自動化の背景には、IoT(モノのインターネット)の技術革新があります。
これまで個別の作業だけが自動化されていましたが、IoT技術により各作業が終了すると次の作業へ引き渡すためのデータ連携ができるようになりました。その連携を自動で行っているのが「コネクテッドロジスティクス」で、近年急成長している分野です。
今回はIoTの技術革新で、物流の現場にどのような変化が起きているのか解説します。
目次
コネクテッドロジスティクスとは
一般的にコネクトは「繋ぐ」という意味ですが、IoTの世界では「インターネットに接続された」という意味で使用されます。近年のIoT技術の進歩により、ロジスティクス内では様々な機器とシステムが連携して「作業の自動化」が進んでいます。
「コネクテッドロジスティクス」とは、IoTにより機器とシステムが連携されたロジスティクスのことです。これまでロボットの活用のように、部分的な作業だけは自動化されていました。近年のIoTの技術革新で機器とシステムがつながることで、一連の作業が自動で流れるようになり、一元管理できるようになりました。
倉庫にトラックで運ばれてきた荷物は、ベルトコンベアで移動される間にRFIDや画像認識技術で自動的に商品が特定され、入庫処理が行われます。続いて自動運転のフォークリフトが、その商品を格納する場所まで運び、棚に商品を格納します。
発送が必要な商品は、自動運転のフォークリフトが棚から商品を取り出し、ピッキングロボットが必要な数量を取り出します。そして梱包用のロボットが段ボールで梱包し、配送用のラベルを貼り付け、出荷されます。これらの一連の作業を連携するために、様々なシステムとロボティクスが連携し、「コネクテッドロジスティクス」が形成されているのです。
上記のケースは、ロジスティクス内というエリアを限定して語られるケースですが、場合によっては、サプライチェーン全体のシステムを連携するような大規模なケースも「コネクテッドロジスティクス」と呼ぶ場合があります。
また最近は、「コネクテッド5G」という言葉をよく聞くようになりました。この「コネクテッド5G」は、最新のモバイル通信の5G通信のネットワークでIoT機器やシステムがつながる仕組みのことを指します。「コネクテッドロジスティクス」は、ネットワークの種類に関わらず、IoTを活用して機器とシステムがつながり一連の作業が自動化されることを指しますので、5Gネットワークで接続されていれば「コネクテッド5G」を活用した「コネクテッドロジスティクス」ということになりますし、固定の光回線の社内ネットワークをWi-Fiや有線LANなどで接続した場合は、光回線を活用した「コネクテッドロジスティクス」ということになります。
※「コネクテッド5G」に関しては、こちらの記事もご確認ください
コネクテッドロジスティクスの成長予測
近年急速に成長している「コネクテッドロジスティクス」ですが、今後どれくらい成長が予想されているのでしょうか。東京都渋谷区の調査会社SDKIが2021年8月に発行したコネクテッドロジスティクス市場のレポートでは、世界のコネクテッドロジスティクス市場は2022年の548億ドルの市場価値から、2030年までに3,972億ドルに達すると推定されています。さらに2022~2030年の間に、年平均32.7%の成長率で成長すると予想されています。「コネクテッドロジスティクス」は、とてつもないスピードで成長しているのです。
コネクテッドロジスティクスは、どのように広がるのか
コネクテッドロジスティクスを牽引しているのは、BtoCのEC市場です。
非常に細かい商品を注文情報通りに梱包し、できる限り早く出荷するためには、作業の自動化が重要になります。
人間の作業よりも早くミスがなく、休みなく稼働できるということは、市場が巨大化しているEC市場においてこの上ない魅力です。そのため、ロジスティクス内の作業の自動化が進んでいるのです。
そしてロジスティクス内の作業が自動化されるようになると、その作業ログを活用した分析が可能になります。分析結果は、ロジスティクス内作業の効率化に活かされます。もしもサプライチェーン全体のログデータを分析出来れば、ビジネス全体の効率化が分析できます。
原材料がどこからいくらで仕入れられて、製造された商品がどれくらいの日数でどこへ輸送され、販売拠点へ届くまでにどれくらいのコストがかかっているかが把握できます。サプライチェーンを全体最適化できれば、各拠点での無駄が軽減でき、経営的にも大きなメリットがあるのです。そのため「コネクテッドロジスティクス」は、非常に幅広い分野での取り組みが進められています。
倉庫内における「コネクテッドロジスティクス」の例
では実際に、どのように「コネクテッドロジスティクス」が実現されているのでしょうか。
「コネクテッドロジスティクス」は、倉庫内作業を自動化するために活用されるケースと、倉庫から出荷されて販売店や卸売業者まで商品を届ける販売物流で活用されるケースがあります。まずは、前者の倉庫内作業の自動化で活用される「コネクテッドロジスティクス」について紹介します。
倉庫内作業の自動化で活用される「コネクテッドロジスティクス」は、大きく分類すると全自動の「自動倉庫システム」と、ロボティクスとシステムを後付けで連携するケースがあります。
自動倉庫システム
まずは、「自動倉庫システム」を一括導入するケースについて紹介します。
「自動倉庫システム」とは、倉庫内のピッキングから検品、そして梱包から伝票シールの貼り付けまで全工程をIoTのコネクテッドな環境で全自動で行うシステムです。巨大な自動で動く棚にピッキングロボットが付帯しています。入出庫や在庫をWMS(倉庫管理システム)で管理しながら、荷物を所定の場所から自動で取り出したり、所定の場所へ自動で格納したりします。
システムから荷物の入出庫の指示が出ると、荷物が格納されている棚にピッキングロボットが入れるように棚自体が自動で開閉します。そして荷物の格納場所へピッキングロボットが入り込み、荷物の取り出しや格納を行います。取り出した荷物は、ベルトコンベアに乗せられて次の工程へ進みます。荷物はパレット、コンテナ、ケースといった様々なサイズに対応し、冷凍・冷蔵の温度管理や危険物保管の環境にも対応します。
入出庫からピッキング作業を自動で行いWMSと連携する仕組みが一括で備わっているため、このシステムを導入すれば、自動作業に必要な機能がすべて備わっている完成版です。
ロボティクスとシステムを後付けで連携するケース
続いて、ロボティクスとシステムを後付けで連携するケースです。
こちらは、自動倉庫のように全自動ではありませんが、部分的にIoTを活用して自動化する工程を加えたものです。自動搬送ロボットを提供している会社が、そのロボットとシステムを連携するための仕組みを販売しているものです。「自動倉庫」のように完全自動ではなく、人間の作業と共存するタイプになります。
「自動倉庫」では、棚自体が動いてロボットが指定場所へ移動していましたが、こちらは人とロボットがピッキングエリアで共同作業を行います。ピッキングリストが読み込まれると、ロボットが自動で商品の保管場所に移動します。荷物は自動で取り出すのではなく、人間が対応します。ピッキングスタッフがロボットの指示に従って商品を取り出してロボットに載せると、ロボットが次の作業場所へ移動します。
途中で人間の作業が加わるものの、入出庫でWMSと連携し在庫状況を変更する処理が走るため、データ連携は自動で行われます。「自動倉庫」はかなり大掛かりなシステムになりますが、こちらはロボット1台から導入できるため、手軽に導入することができます。
また、ロボットの作業をWMSと連携するだけでなく、エレベーターシステムと連携して、自動でフロアを移動するようなシステム連携を対応している会社もあります。そのような会社では、屋外での自動運転の実証実験で使用された自動運転ロボットを開発しているため、流れ作業以外の部分でも多様なシステム連携を行っています。火災報知システムと連携して火災発生時の対応を自動で行ったり、特定の処理の後に自動で通知を出すよう後付けで指令を加えられるようなシステムになっています。
「自動倉庫」も後付けのシステムも、リアルタイム監視と作業ログを残すことができるので、ロジスティクス内が効率的に稼働しているかの分析もできるようになっています。
販売物流における「コネクテッドロジスティクス」の例
続いては、倉庫から出荷されて販売店や卸売業者まで商品を届ける販売物流で活用されるケースを紹介します。
IoT技術の進化により、トラックや飛行機・船舶での荷物の移動中でも、荷物の温度管理ができるようになりました。新型コロナウイルスワクチンの輸送では、温度管理が徹底されましたが、ここでもデータ連携技術が活用されています。
活用されたのは「温度ロガー」と呼ばれるIoT機器。リアルタイムの荷物の温度を計測し、インターネットを通じて遠隔システムへ通信するものです。
IoT化されていない単独の「温度ロガー」では、荷物到着後にすべてのログをチェックして、輸送中に指定温度を超えていないかを確認しなければなりませんでした。しかし、インターネットを通じて遠隔システムへデータ通信することで、管理者が異常をリアルタイムに検知することができるようになったため、確認作業が容易になったのです。
機器とシステムがつながるメリット
このように物流の様々な現場で、機器とシステムがつながっています。
機器とシステムがつながるメリットは、どのようなものがあるのでしょうか。
●作業の自動化
作業の自動化は、生産性の向上と人員削減につながる大きなメリットです。
システムとロボットが連携することで、必要な荷物を自動で取り出し、ベルトコンベアで移動させた後、自動で梱包や配送伝票の貼り付けが行われるようになりました。
●遠隔地・移動中の状況把握
かつてデジタル技術が発展する前は、トラックや飛行機・船舶での輸送中は、荷物が今どこを移動中で、どのような状態であるかを把握することはできませんでした。しかし、GPSや各種センサー技術の発展とIoT技術の進化により、遠隔地・移動中の状況把握が可能となりました。
●サプライチェーンでの情報共有
このように輸送の移動中でも状況が把握できるようになったこと、また輸送中の事故や渋滞といったトラブルを事前に検知できるようになったことで、サプライチェーンが同じ情報をリアルタイムで確認しながら、回避策を検討できるようになりました。そして、倉庫の稼働状況やトラックの積載率といった様々な数値が、サプライチェーン全体での無駄を無くすために活用できるようになりました。
コネクテッドサプライチェーンでサプライチェーン全体の最適化を
「コネクテッドロジスティクス」は、倉庫内の作業を自動化することにより、人手不足や生産性の向上に役立ちます。さらに、自動化された作業はすべて作業ログが残るので、物流全体の無駄がどこにあるのかも見えてきます。そのため「コネクテッドロジスティクス」を倉庫内だけでなく、サプライチェーン全体に対応する「コネクテッドサプライチェーン」という発想もでてきています。
「コネクテッドサプライチェーン」は、サプライチェーンの全体最適化を目指し、サプライチェーン各社のシステムを連携して、エコシステムを生成するソリューションです。コネクテッドになっていないサプライチェーンは、一元管理されておらずサプライヤーごとの管理となるため、サプライチェーン全体のものの流れが可視化されません。しかしコネクテッドな環境になれば、全サプライヤーが同じシステムを導入して、データが一元管理されるため、サプライチェーン全体のものの流れが可視化できます。さらにサプライヤー間の取引における伝票処理や、余剰在庫の最適化なども合理化できます。
サプライチェーンの管理をエリアごとに対応していると、原材料費の管理や廃棄処分もエリア別の部分最適になります。しかし、サプライチェーン全体で管理すると、全体最適できます。原材料費の変動に対しても、エリアごとに対応を分けたほうが効率的なのか、集中管理にすべきかの判断ができるようになります。また廃棄処分が発生するようなケースも、全体最適により廃棄前に必要なエリアへ必要な量を分配すれば廃棄量を軽減できます。
このように、サプライチェーン全体をマネジメントすることを「サプライチェーンマネジメント」と呼び、「サプライチェーンマネジメント」を実施するには、「サプライチェーンマネジメントシステム」と呼ばれるソリューションが使われます。
「コネクテッドロジスティクス」は、急成長しています。
このように、倉庫内だけでなく、サプライチェーン全体を連携することで、単なる作業の効率化というだけでなく、経営視点でビジネス全体を数値管理できるようになるのです。
「サプライチェーンマネジメント」や「サプライチェーンマネジメントシステム」については、別途解説している記事がありますので、そちらをご確認ください。
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