●先端技術
倉庫の自動化を推進する画像認識技術の活用例|先端技術
この記事で分かること
- 画像認識技術は倉庫内の課題をどのように解決するか?
近年物流倉庫内では、作業の自動化が進んでいます。
かつてバーコードリーダーを手作業で読み込んでいた作業は、RFID(Radio Frequency IDentification)に切り替わっています。RFIDに登録された情報を電波により非接触で読み取ることができるようになったため、ベルトコンベアを通過する際に情報を検知して仕分け処理を行ったり、自動運転のフォークリフトが自動で商品のピッキングを行えるようになりました。
また、各種センサー技術も倉庫の自動化に役立っています。
温度センサーにより商品の温度管理が自動化でき、重量センサーはピッキングした商品の数量が正しいかを商品の重量から自動で検品しています。
様々な技術が倉庫の自動化に活用されていますが、自動化に大きな影響を与えたのはAIの技術革新で進化した画像認識技術です。ベルトコンベアで流れてくる商品を商品画像から検品したり、必要な商品をピッキングロボットが取り出す作業にも、画像認識技術が使われています。
今回は、物流のロジスティクス内で画像認識技術が、どのような作業の自動化につながっているのかを解説します。
目次
画像認識技術とは
画像認識とは、AIに画像の特徴を学習させて、対象物を識別するパターン認識技術です。
AIのディープラーニングという技術が飛躍的に学習能力を伸ばしました。
例えばAIで、「猫」を認識させるための学習手順を簡単に紹介します。
まずはAIに「猫」と「猫以外」の画像を大量に与えて、「猫」の特徴を自動学習させます。すると、AIは画像データから猫の特徴を把握し、同じ特徴を持った画像が与えられれば、それを「猫」だと推測することができるようになります。
物流のロジスティクス内の作業では、取り扱う商品画像を覚えさせ、ベルトコンベアで運ばれてきた商品を画像認識技術で判別して商品コードと瞬時に紐づけて処理したり、傷がついている不良品の特徴を覚えさせて、検品で不良品をチェックしたりする場合に使用されています。
この画像認識技術の精度が向上したことから、ロジスティクス内での作業がスピーディーになりました。
画像認識技術は、どこまで進化しているのか
画像認識技術は、人間で言えば「目」にあたる機能です。
仕分けや検品やピッキング、また書類に記載された文字を認識して処理したり、画像からモノの寸法を測定するようなこともできるようになっています。
しかも、それらの処理速度が非常に早く、正確に判断できるというメリットがあります。
近年の画像認識技術の進歩で、どれくらい高度なことができるようになったのか、事例を紹介します。
●異常の検出と検知
ディープラーニングにより、正常な商品画像と異常のある商品画像を学ばせることで、異常を検知できるようになりました。そのため検品を自動で行い、不良品をはじくことができています。
●精度と品質の向上
また上記のように、不良品が発生すればそれを自動で除外できるようになりました。そこで、製造段階の商品をカメラで監視し、不良品が製造された時点の記録を残すことで、不良品が製造される原因を特定して改善に役立てる取り組みも進められています。
最新の画像認識技術では、AIがカメラに映し出された画像が何かを判定する画像認識速度は0.15秒以下と言われています。その速度で商品の検品を実施した際、判別結果の正解率は99.99%を達成していると発表しているベンダーもあります。画像認識技術は、そこまで進化しているのです。
画像認識のソフトウェアは安価になり、簡単なものでは10万円程度でパソコンにインストールしてUSB接続したWEBカメラで活用できるようなものも販売されています。ただ、AIに学習させる作業は専門知識が必要となりますので、ソリューションとして専門業者にソフトウェアとロボットと初期導入のセッティングなど機能一式を導入するケースが多くなります。ソリューションで機能一式と初期設定を合わせると数千万円というような導入費がかかります。
倉庫内で活用される画像認識技術とは
また画像認識技術が活かされているのは、検品だけではありません。
かつては人間にしか作業できないと言われていた「ピッキング」も、ロボットが対応できるようになりました。その「ピッキング」の精度向上にも、画像認識技術の技術向上とセンサーとの連動という技術が使われているので紹介します。
例えば、ECで文房具のボールペンが購入されて、自動で該当商品をピッキングする手法について説明します。2D画像からロボットアームの手元の位置・姿勢を導き出す方法と、3Dのビジョンセンサーから導き出す方法があります。
ピッキング技術①【2D画像から導き出す手法】
まずは、2D画像からロボットアームの手元の位置・姿勢を導き出す方法を紹介します。
こちらの手法では、ボールペンの位置を確認した2D画像から、目標物をつかむためのアームの軌道を生成するための専用AIが稼働します。このAIでは2Dの画像から、6軸でロボットアームの手元の位置・姿勢が導き出されます。その上で、どこをつかむのがベストなのか判断して、必要な強さでつまんで持ち上げます。
ノウハウはロボットではなくAIに蓄積されているため、新たなロボットを導入した場合にも、そのAIを活用できます。そのため、ロボットを入れ替えた時でも、新規のティーチングが不要となります。また商品をつかむ人間の指にあたるグリッパも、対象物の形状に関わらず同じグリッパで対応が可能ということで、グリッパを付け替える手間もありません。技術的に複雑なセンサーを使用していないため、センサー型と比べてコスト的なメリットも見込めます。
ピッキング技術②【3Dのビジョンセンサーから導き出す手法】
続いては、ビジョンセンサーを活用する方法です。
ビジョンセンサーは、カメラで対象物を撮像し、さらにレーザーで位置を計測します。3Dのビジョンセンサーは、縦横だけでなく奥行きも計測できるので、立体的に対象物を判断できます。もしも対象物が確認しにくい位置にある場合は、センサーが認識しやすい位置へ移動し、視点を変えながら部品を認識できるので、作業時の対象物の死角を軽減できます。
このビジョンセンサーが計測した数値に基づいてアームの適切な位置を演算し、対象物をつかむ位置を決めていきます。ビジョンセンサーを使うことで、形状や大きさの異なる商品をピッキングするような場合でも、対象物ごとにティーチングを行う必要はありません。補正値を入力することで対応できます。
最新のビジョンセンサーでは、0.4秒で対象物を認識すると言われていますし、これまで人間が作業していたスペースに設置できる省スペース化されたピッキングロボットもでてきています。
また画像認識技術が自動化した作業は、検品やピッキングだけではありません。以下のような作業も、画像認識技術を活用して自動化が進んでいるのです。
●仕分け
ベルトコンベアで運ばれてきた荷物や商品が何かを判別して、ベルトコンベアの進む先を切り分ける仕分け作業にも活用されています。
●紙の伝票の自動処理
また書類に記載された文字を判別する技術で、紙の書類に記載された内容を、自動で在庫管理システムに入力し、紙の伝票の自動処理も行われています。
●バーコードのない商品の商品番号を商品自体で検索
RFIDやバーコードのない商品を、商品自体をカメラで撮影することで、商品データベースと照合し、商品コードを検索するような対応もできます。
●採寸
商品発送の際に必要な段ボールのサイズを、カメラで撮影した画像から自動で計測します。
また、倉庫の棚に商品を入庫する際に、棚に入るサイズかどうかを判断する場合にも、カメラによる採寸技術は活用されます。
●梱包
最近は、発送物の段ボールでの梱包も自動化されています。その際に、規定サイズの段ボールを使用するのではなく、発送物のサイズにジャストフィットな箱を作り梱包するロボットがでてきています。発送物のサイズを自動計測し、そのサイズを梱包する箱の縦横高さのサイズを自動計算して、平面の段ボールから箱を作るというものです。
今後期待される画像認識技術
これまで、今現在ロジスティクス内で活用される画像認識技術の例を紹介してきました。
最後に、今後「画像認識技術」はどのような使われ方が進みそうか、物流分野で注目されそうな活用方法を解説します。
●異なるサイズの積み荷を、効率的に積載する計画
トラックの荷台に、荷物を最大量積み込む場合、すべてが同じサイズでパレットに乗っていれば、積み込む順序は気にしなくても問題ありません。しかし、サイズが異なる荷物を、効率よく最大限荷室に積み込む際には、まだまだ人間の経験値が重要視されています。
効率よく積載する順序を計算するシステムもありますが、そのようなケースでは、全荷物のサイズを把握したうえで積み込む順序を計画する必要があります。ベルトコンベアで次々に流れてくる異なるサイズの荷物の積載場所を、瞬時に判断するのは、まだまだ人間の役割となっています。しかし、やがてこの経験値も、AIにより自動化されるのではないかと考えられています。
●動画画像認識で、作業の異常を検知
画像認識技術は、静止画だけでなく動画でも活用が進められています。
動画画像認識技術を活用することで、倉庫内の監視カメラの映像解析が可能となります。監視カメラの映像を解析することで、危険エリアへの侵入や不正侵入を検知するだけでなく、作業者の異常行動による現場のトラブルを検知できます。トラブルが発生した際には、自動でラインを止めて2次災害の防止に役立てられます。
●作業動線の確認
ロジスティクス内の作業で、人や自動運転機器がどのように動いているかをチェックし、作業効率の悪い作業動線を見つけて改善するためのシステムも活用が進んでいます。
●ロジスティクス内のドローン活用
ロジスティクス内は敷地面積が広く、高所にも荷物が置かれています。そこで、格納された在庫のQRコードをドローンで読み取り、正しく在庫が格納されているかをチェックする取り組みも進んでいます。
このように画像認識技術は、ロジスティクス内の様々な作業で活用されています。さらに作業だけではなく、生産性向上のための人やモノの動きを確認するためや、人間の作業の安全を確保するためにも使われているのです。
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