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RFIDパレットで物流をクラウド化|先端技術

RFIDパレットで物流をクラウド化

この記事で分かること

  • RFID、RFIDパレットとは何か、なぜ必要か?
  • RFIDパレットの導入方法・活用事例

物流の世界でも「RFIDタグ(Radio Frequency Identification 電波を使って非接触でデータ読み書きする技術)」の利用が進んでいます。これまでのバーコードやQRコードとは違い、タグが見えなくても微弱電波でスキャンでき、一度に大量のタグを一括スキャンできるなど多数の利点があるため、倉庫で商品を探す場合に非常に便利です。

今回は「RFIDタグ」について、そしてRFIDを搭載したパレット「RFIDパレット」の活用法について解説します。

RFIDタグとは

まずは、「RFIDタグ」とは何か説明しましょう。

「RFIDタグ」は、ICチップを埋め込んだタグのこと。そのチップに商品情報(商品名、価格、サイズ・色などのSKU、製造年月日や製造工場)を埋め込み、商品に貼り付けて管理します。最近はシールタイプのものもあるので、かつてよりは手軽で低価格になってきています。安価なものは1枚10円程度という価格帯まで下がってきています。

洋品店では値札に「RFIDタグ」を装着し、買い物かごをレジの台に置くと自動で会計をしてくれる「自動レジ」も出てきていますので、イメージしやすいと思います。

今までのバーコードやQRコードは、コードを一つひとつスキャンして読み込まなければなりませんでした。しかし「RFIDタグ」は、非接触でデータの読み書きができるため、タグそのものを見つけてスキャンする必要がありません。先程の洋品店の例のように、かごの中に入っている「RFIDタグ」を一括で読み取ることができるのです。

物流の倉庫の中では、段ボールに商品が梱包されているため、どこに何が保管されているのか、ぱっと見ただけでは分かりにくい状況があります。そのため倉庫の格納場所を、商品ごとに固定する「固定ロケーション」で運用している場合もあるでしょう。ただ、そのスペースに入りきらない量の在庫を抱えた場合には、そのルール通りの運用ができなくなります。

それを改善するために「フリーロケーション」という発想が生まれました。

商品の格納場所を決めずに、搬入された順序に格納すればよいという発想です。

ただし「フリーロケーション」では、「どの商品がどこにあるか」を判別できる方法が必要です。その際に活用されるのが「RFIDタグ」です。「RFIDタグ」は、そのタグに埋め込まれた情報を、外部から管理できるため、倉庫内に格納した段階で、格納場所や格納日時などの情報を書き込めば、在庫管理システムと連携して、いつ何個入庫されて、倉庫内のどこの場所に格納されているかが分かります。この一連の作業を、すべて自動化したら管理が楽になります。

RFIDを導入する際には、以下のようなコストが目安となります。

■RFIDタグ

荷物やパレットに貼り付けるRFIDタグは、製品によって価格は変わりますが、近年急激に価格が下がってきています。安価なものになると、かつて1枚当たり100円~200円程度していたものが、近年は10円を切るようになっており、今後もさらに価格が減少すると見られています。

■RFIDリーダー

RFIDのデータを読み取るには、ハンディーリーダーが必要となります。

RFIDリーダーは機能によって価格に幅がありますが、安いものだと3,000円〜5,000円前後、高いもので10,000円〜30,000円以上というのが相場になります。

■アプリケーション

RFIDリーダーで読み取ったデータは、アプリケーションソフトで管理します。

RFIDのアプリケーションも、機能によって価格の幅があります。安価にはじめるには、クラウドサービスを活用すれば、月額数千円から始めることができます。

RFIDパレットとは

そんな「RFIDタグ」を、パレットに装着したものが「RFIDパレット」です。

パレットは管理が煩雑で、年間に数%が戻ってこないで流出するという状況にあります。特に自社の管理ではない出荷先で紛失されるケースが多いことから、対策が難しい部分もあります。パレットは何度も繰り返し使えるものなので、年に数%でも紛失・購入すればそれだけ無駄な費用がかかります。パレットの紛失を抑制することが流通コストの損失を抑えることにつながります。

これまで出荷先でのパレット管理には、下記のような課題がありました。

・自社の管理下ではないので、パレットの管理ができていない

・物流センターへ戻すパレット数を把握できていない

・紛失・破損がありコストの損失が大きい

「RFIDタグ」を活用して、パレットがどこにあるのか、そのパレットは荷物を積んだ状態なのか、空の状態なのかも遠隔で管理できるようになれば、パレットの流出防止につながります。

もちろんメリットはそれだけはでありません。物流の各拠点に、商品が今いくつあるのか、その拠点にはいつ納入されて、次の拠点にいつ出庫されたかも管理できるようになります。

また最近は物流も自動化が進んでいますので、自動運転のフォークリフトというものが出てきています。自動で特定のパレットを特定の場所へ運ぶというものですが、この自動運転のフォークリフトが、自動で商品パレットを判別するためにも「RFIDパレット」が重要となります。

「RFIDタグ」は実際にタグ自体が見えていなくても検知できます。そのため商品が格納されている位置まで移動して、タグが見えなくても対象となる「RFIDパレット」を確実に運び出すことができるのです。運び出したら、そのパレットの位置も書き換えることができるのも特徴のひとつです。

これまでのバーコードやQRコード管理の場合には、読み取りエラーもあり、棚卸しをしてみるとデータ上の個数と実際の個数が異なるなんていうケースも多々あったと思います。「RFIDタグ」を活用することで、そのようなエラーも軽減され、自動化で作業時間が短縮されるというメリットもあります。

共同配送でも活躍するRFIDパレット

共同配送でも活躍するRFIDパレット

近年物流拠点では、トラックが荷下ろしのために乗り付ける「トラックバース」と呼ばれるスペースでの渋滞が問題視されています。大量の荷物を扱う場合には、ドライバーが2時間から3時間、ひどい時には12時間も待たされるようなケースがあるようです。渋滞を避けるためにAIシステムを導入したり、時間予約制を取り入れたりもしていますが、根本的にはトラックの台数を減らすことが一番の解決策とも言えます。

そのような背景もあり、最近では物流の生産性を上げるために、他社と物流を共有する「共同配送」の取り組みが進んでいます。自社だけで配送を行った場合、トラックでの積載に余剰が出たり、帰り便が空積みになったりと無駄が生じます。また家電業界では、大規模量販店への搬入は各社行いますので、共同配送で効率化させる動きがでているのです。

複数企業が物流を共有化すると、トラックが各社に到着する時間も管理が必要となります。もちろんそのような管理も、AIが各社の輸送を最適化するようになっています。

パレット販売会社と食品メーカー、生活用品メーカーの3社が連携して行った、商品輸送とレンタルパレットの納品・回収のトラック運行を集約した実証実験では、3社の独自のトラック運送では60%程度だった実車率が99%にまで向上したという結果が報告されています。

すべてを自社で管理する訳ではなくなってくると、予定通りに各物流拠点を通過し、最終的な目的地へ納期通りに納入できるか、その管理が重要になります。

そのため、「RFIDパレット」で管理できれば、パレットが今どこの拠点にあるのか、いつどこの拠点に搬入され、その前の拠点をいつ出庫できているかも確認できるようになります。

そして、このような「RFIDパレット」を活用したクラウドシステムは、「レンタルサービス」もでてきています。

近年物流はかつてのような「大量生産」のビジネスから、「多品種少量生産」のスタイルに変わってきています。そのため使うパレットの量は急激に増加しています。そのため物流コストはどんどん上がっており、レンタルでコストを抑えるというメリットもあります。

またレンタルパレットは、コストを抑えられるだけではありません。

使用したレンタルパレットは、工場から出庫して物流センターを経由して最終的な販売店へ納入された後、卸売業者の物流センターから工場へ戻され、パレットレンタル業者によって回収される仕組みになっています。パレット回収が面倒という荷主には、便利なサービスとなるでしょう。

モノの流れをすべてデータ化して生産性を向上させる物流DXのためには、「RFIDパレット」は重要な役割を担うことになっているのです。

まとめ

「RFIDタグ」の出現により、バーコードやQRコードを1つずつ読み込まなくても一括スキャンできるようになりました。またタグに紐づく情報も、簡単に編集できるため、倉庫内で「フリーロケーション」など管理方法の進化が進んでいます。

そんな「RFIDタグ」を、パレットに装着した「RFIDパレット」も活躍しています。

「RFIDパレット」は、パレットの現在位置が検知でき、かつそのパレットは空なのか荷物を積んでいるのかもわかるようになったため、パレット単位での荷物の状況がクラウド環境で把握できるようになりました。この「RFIDパレット」は、レンタルサービスも進んでおり、低コストでパレットの管理を外部に委託できるようになってきています。

さらに、この「RFIDパレット」は、各社が共同で配送を行う「共同配送」で活用されています。

自社のパレットが現在どのような状況なのかを、クラウド上で把握できるようになったことから、「共同配送」のボトルネックとなっていた「状況把握と管理」が解消され、各社配送のロスを軽減する方向にシフトしています。

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