●先端技術
エラーを軽減させるためのピッキングAIの学習術 |先端技術
この記事で分かること
- ピッキングとは何か、なぜ必要か?
- ロボットを使うとピッキングはどのように自動化されるか?
近年AI技術の発達により、バラ積みされたアイテムの中から1つずつ取り出すピッキング作業も自動化が進んでいます。
工業用部品のネジやボルトなどのさまざまなパーツを、ひとつずつ取り出して一定数のロットを作りたい場合などに必要なのがピッキングロボット。人間の腕のようなアームの先で、人間の指のようなつまむ動作を行い、細かな部品なども1つずつつまんで作業します。工業用部品に限らず、インターネット通販(以降ECと表記)で文房具などの細かな商品が購入された場合も、ピッキングロボットが必要商品を必要個数ピックアップします。
ピッキングロボットは、どのように必要な商品を必要な数だけ拾い上げるのでしょうか。
例えばECで、下記の商品が購入されたとします。
・3色ボールペン1本
・スティックのり2本
・封筒と便箋のレターセット2種類(各1点)
倉庫内から、購入された商品を持ってきて梱包する必要があります。
個人商店のようなECであれば、人がそれぞれの商品を探してきて、1点ごとに商品を確認して梱包するでしょう。
しかし何千点、何万点も購入されるような大規模なECの場合は、どのように対処するでしょうか。
目次
ロボットの元へ商品が自動で届く
もちろん今は、すべて自動でロボットがピッキングを行います。
個人商店のような場合は、人が商品を探しに行きますが、大規模なECではすべてが自動化されています。商品がロボットのところまで運ばれてくるのです。
商品番号がRFID(radio frequency identifier)タグなどで紐づけてあるので、購入商品が格納されている場所から、在庫のケースが運ばれてきます。1ダースなどの箱入りパッケージでの梱包であれば、ピッキングもそれほど難しくありません。ただバラの場合は、商品もケース内にバラバラで入っています。その中から1つだけを、取り出さなくてはなりません。
人間がやるなら簡単な話です。
しかし、大量にボールペンが入っているケースから1本だけ取り出すのは、ロボットにとっては、意外に難易度が高いのです。
クレーンゲームをやったことがある人なら、ロボットアームで1つの商品を取り出すことが難しいことはイメージできるのではないでしょうか。
取り出すボールペンを選定する
クレーンゲームでは、人間が目で見て、取りたい商品を決めて、そこへロボットアームを操作して持っていきます。
しかしこれをロボットがやる場合には、さまざまな技術が必要です。
まず、ケースの中のどこにボールペンがあるかを判別しなければなりません。
ケース内ではボールペンが、縦になっている場合もあれば、横になっている場合も、斜めになっている場合もあれば、他のボールペンに埋もれて突き刺さっている場合もあるかもしれません。その中から、取りやすい位置にあるものを判断します。
そこでAIを活用して、どの位置のボールペンを取り出すのか判断します。
そして、取り出すボールペンを決めたら、どのようにロボットアームを持っていけばボールペンをつかめるかを判断します。
クレーンゲームをやっていても、ここが一番難しいところです。
アームをどの位置で止めるのか、それがクレーンゲームの一番の山場です。
正面からだけでなく、横からやジャンプして少しでも上からも位置を確認しようとした経験もあるのではないでしょうか。
1本だけ正確に取り出す
この1本だけ正確に取り出すためのメカニズムには、いくつかの手法があります。
今回は、2D画像からロボットアームの手元の位置・姿勢を導き出す方法と、3Dのビジョンセンサーから導き出す方法を解説します。
2D画像から導き出す手法
まずは、2D画像からロボットアームの手元の位置・姿勢を導き出す方法を紹介します。
こちらの手法では、先程のボールペンの位置を確認した2D画像から、目標物をつかむためのアームの軌道を生成するための専用AIが稼働します。このAIでは2Dの画像から、6軸でロボットアームの手元の位置・姿勢が導き出されます。その上で、どこをつかむのがベストなのか判断して、必要な強さでつまんで持ち上げます。
ノウハウはロボットではなくAIに蓄積されているため、新たなロボットを導入した場合にも、そのAIを活用できます。そのため、新規のティーチングが不要となります。また商品をつかむ人間の指にあたるグリッパも、対象物の形状に関わらず同じグリッパで対応が可能ということで、グリッパを付け替える手間もありません。技術的に複雑なセンサーなどを使用していないため、コスト的なメリットも見込めます。
3Dのビジョンセンサーから導き出す手法
続いては、ビジョンセンサーを活用する方法です。
ビジョンセンサーは、カメラで対象物を撮像し、さらにレーザーで位置を計測します。3Dのビジョンセンサーは、縦横だけでなく奥行きも計測できるので、立体的に対象物を判断できます。もしも対象物が確認しにくい位置にある場合は、センサーが認識しやすい位置へ移動し、視点を変えながら部品を認識できるので、作業時の対象物の死角を軽減できます。
このビジョンセンサーが計測した数値に基づいてアームの適切な位置を演算し、対象物をつかむ位置を決めていきます。ビジョンセンサーを使うことで、形状や大きさの異なる商品をピッキングするような場合でも、対象物ごとにティーチングを行う必要はありません。補正値を入力することで対応できます。
最新のビジョンセンサーでは、0.4秒で対象物を認識すると言われていますし、これまで人間が作業していたスペースに設置できる省スペース化されたピッキングロボットもでてきています。
梱包だって自動化の時代
さて、商品のピッキングが終わったら、配送に向けて最後は梱包して宅配ラベルの貼り付けが必要です。
今は、ここも自動化が進んでいます。
商品をこの梱包ラインに乗せると、緩衝材付きのクッション封筒の素材が、上下から商品を挟みます。商品サイズに合わせた適切な位置で上下左右が圧着されて、クッション封筒が閉じられます。その上から、配送伝票のラベルが貼り付けられますので、あとは配送業者に渡すのみということになります。
この自動梱包ライン、なんと1時間に最大1000パックも対応可能なのだそうです。
人間がやるより早く、ミスなく、大量にできますから、物流DXのパワーを感じます。
ネジやボルトなどの工業用品を取り扱っているようなケースでは、ピッキングロボットは既に活躍しています。これからニーズが増えそうな分野では、食品を扱うようなケースや、ECでの物流が考えられます。
食品は、パンのようにやわらかい形状のものなどもあり、ソフトに持ち上げて移動させる必要がありますが、そのようなソフトな動作もピッキングロボットに備わってきています。またEC分野も効率・生産性が求められているため、ピッキングロボットの導入が進む分野と考えています。
エラーを軽減させるために
ピッキングロボット導入時には、ピッキングする商品の「初期設定」が重要となります。ロボットメーカーでは、取り扱う商品の大きさ・重さ・表面の形状などの諸条件から、つかみ方をチューニングして納品してくれます。
カタログ上では精度90~95%とされていたのに、実際には70%程度の精度に落ちるというようなこともあるかもしれません。ただ、最近のピッキングロボットの精度はかなり上がってきていますので、70%のような精度になる場合は、ロボットメーカーでも「想定外」のケースになっている可能性が高いと思われます。
もちろんエラーが発生するような場合は状況を伝えることで、メーカーがチューニングしてくれるでしょう。しかし導入時にしっかりと想定される商品の初期設定を定義し、事前にチューニングしてから導入してもらうことが大切になります。
まとめ
AI技術の進化により、細かな部品や商品をひとつずつつまみ上げるピッキングロボットの精度が向上しています。2D画像から導き出す手法や、3Dのビジョンセンサーから導き出す方法など、対象物の検知方法はいくつかあり、コストと精度という観点から選択できるようになりました。
ピッキングのエラーを軽減し、精度をあげるためには「初期設定」が重要となります。
ピッキングロボットで扱う商品・部品の大きさ・重さ・形状などを、ロボットベンダーにしっかりと伝えることで、チューニングして納品してくれます。そのため、ピッキングロボット導入時には、事前にどのようなシチュエーションで、どのような商品・部品をどのようにピッキングさせたいのか、予算も含めベンダーに相談するといいでしょう。
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