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SDGsでの地球環境への配慮として必要とされる「モーダルシフト」とは|物流基礎

SDGsでの地球環境への配慮として必要とされる「モーダルシフト」とは

この記事で分かること

  • 物流におけるSDGsの取り組みとは?
  • モーダルシフトとは何か?なぜ必要か?
  • モーダルシフトの導入事例は?

現在多くの企業・業界が、SDGsへの取り組みを進めています。

SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致により採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」で、17のゴールが示されています。

SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」では、CO2排出量に代表される環境負荷軽減が課題となっています。また、目標8「働きがいも経済成長も」や目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、人材不足が課題となる物流業界が持続可能な産業になるために、対応が必要な課題となります。

物流業界は多くのトラック輸送を行っており、環境負荷軽減は大きな課題となっています。同時に物流業界は、労働力不足も大きな課題となっています。これまでも物流企業が、低燃費・低公害な環境対応車(エコカー)の導入や、プラスチックパレットのリサイクルといった努力をしてきましたが、もっと大きな抜本的な対策が必要であると考えられてきました。

この環境負荷軽減と労働力不足対策の両方を抜本的に改善するために考えられたのが「モーダルシフト」です。SDGsでの地球環境への配慮として必要とされる「モーダルシフト」について解説します。

モーダルシフトとは

「モーダルシフト」とは、トラックなどの自動車で行われている貨物輸送を、環境負荷の小さい鉄道や船舶へと転換する取り組みです。CO2排出量に代表される環境負荷軽減と物流業界の人材不足への対策として、国土交通省も力を入れている取り組みのひとつです。

現在多くの企業では、環境負荷の低減を社会的責任(CSR)として進めています。そのような取り組みの中でCO2の大幅削減が見込めるのが、輸送における環境負荷対策であると言われています。

ただ環境負荷が大きく軽減できると考えられているモーダルシフトや輸配送の共同化・輸送網の集約は、個別企業だけでの解決が難しい問題です。業界全体で取り組まなければ進まないため、政府も力を入れて対応しています。そのような政府が推進している物流の環境対策の中でも、モーダルシフトは特に環境負荷の低減効果が大きい取り組みとして注目されています。

モーダルシフト

モーダルシフトが必要な理由

ではモーダルシフトによって、トラックから鉄道や船舶の輸送へ切り替わると、なぜ環境負荷が軽減されるのでしょうか。環境負荷軽減の理由とともに、モーダルシフトが必要とされる理由について解説します。

モーダルシフトが必要とされる理由は大きく2つあります。CO2排出量の削減と労働力不足の解消・働き方改革です。

【二酸化炭素排出量の削減】

まずは、トラックと鉄道や船舶で、同じ量の貨物を輸送する際のCO2排出量を比較してみましょう。

1トンの貨物を1km運ぶ(=1トンキロ)ときに排出されるCO2の量を比較してみると、トラックが225gなのに対し、鉄道は18g(トラックの8%)、船舶は41g(トラックの18%)に削減されます(国土交通省2019年度算出数値)。つまり輸送の方法を転換することで、鉄道利用では92%、船舶利用なら82%のCO2排出量を削減できるのです。

【労働力不足の解消・働き方改革】

またモーダルシフトは、労働力不足の解消や働き方改革という観点からも注目されています。トラックでの長距離輸送では通常数百kmの距離を運転するため、荷物を届けて出発地点に戻ってくるまで数日のスケジュールが必要です。しかしモーダルシフトで、鉄道や船舶での輸送に切り替えれば、最寄りの鉄道や船舶の転換拠点までの運転だけで済むため、トラックドライバーの運行時間は短時間となり、効率的な業務が可能となります。

かつてモーダルシフトは、500km以上の長距離輸送が対象とされていました。しかし最近では、CO2削減やトラックドライバーの労働環境の改善という視点から、300~400kmといった比較的短い距離でのモーダルシフトの例も増えています。このことから、モーダルシフトによる環境への配慮と働き方改革に力を入れている物流業者が増えていることが分かります。

モーダルシフトに活かす「共同輸送」

このような「モーダルシフト」を進めていく上で課題となるのが、「鉄道や船舶のコンテナに積載する荷量を確保できるか」という問題です。

鉄道・船舶輸送のコンテナはトラックの荷量よりも大きいため、その荷量が確保できないために「モーダルシフト」が活用できないと考えている企業もあるようです。その際に検討していただきたいのが「共同輸送」です。

「共同輸送」は文字通り、複数の物流企業や事業所が連携して、共同でトラックやコンテナを利用する輸送手段のことです。複数の企業や事業所の荷物が集約されるため、荷量が増えて鉄道・船舶コンテナに積載できる荷量を収集できるようになる場合もあります。

「共同輸送」を活用することで「モーダルシフト」が実現できた事例を、この記事の最後に記載しますので、参考にしてみてください。

モーダルシフトを進めていくための取り組み

環境問題や労働力不足問題といった社会課題を解決するため必要とされるモーダルシフトは、政府も力を入れている取り組みのひとつです。政府はモーダルシフト推進のために、物流事業者がモーダルシフトに参入しやすくするための取り組みを行っています。

平成28年に「物流総合効率化法」を改正し、その中で「モーダルシフト等推進事業費補助金」を実施することで、企業の取り組みを進める支援も行っています。

「物流総合効率化法」は、正式な名称を「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」といいます。これまでの個別企業の努力だけでは達成できなかった「輸送網の集約」「モーダルシフト」「輸配送の共同化」といった業界全体での輸送の合理化により、物流業務の効率化を図る事業に対する計画の認定や支援措置等を定めた法律です。

つまり、物流業者が協力・連携して流通の効率化や省力化に取り組むとき、認定条件にあてはまれば、政府がその取り組みを支援するという制度です。支援内容は大きく下記3点となります。ただし、このような支援を受けるためには、定められた条件に適合し、認可を受ける必要があります。

・事業立ち上げや実施の際に、一部経費の補助や許可制度の優遇が受けられる。

・事業に必要な施設や倉庫について、税制特例や規制に関する配慮を受けられる。

・中小企業が取り組むとき、信用保険制度や貸付制度において優遇される。

このような支援により、複数の物流業者が協力・連携することで、物流設備が共用化され、労働者も複数社の業務を兼務できるようになります。小規模な物流拠点を複数運営するよりも、大規模な物流拠点で自動化を推進すれば、生産性が向上します。また、労働者は共同運用する各社の荷量に応じてシフトを変更させることで柔軟な人員配置が可能となり、労働力不足をカバーするようになります。

そして輸送トラックも、共同配送により積載率が向上し、同じ場所への配送は1回にまとめられます。そのため労働力の改善だけでなく、CO2排出量といった環境負荷の低減にもつながります。このようにして、物流事業の国際競争力を、総合的に強化していこうというのが、「物流総合効率化法」の大きな目的です。

物流総合効率化法の支援対象になるには

では、物流総合効率化法の支援対象になって、制度の優遇を受けるためにはどのような対応が必要なのでしょうか。

物流走行効率化法で定められた支援対象となるには、「総合効率化計画」を提出し、認定されなければなりません。この計画では、大きく下記4つの条件を満たす必要があります。

●基本方針に照らして、適切であるか

「複数事業者の連携による取組か」「輸送・保管・荷捌き・流通加工を一体的に実施するものか」「共同化によって効率化が図られているか」「環境負荷や周辺環境への配慮はあるか」など、基本方針に沿った計画になっている必要があります。

●流通業務総合効率化事業の遂行が確実であるか

計画が遂行可能な事業であるかを判断されます。効率化を達成できるか、資金面での見通しはついているか、関係法令の許可を受けられるか、といった観点からの確認が必要です。

●各事業法の許可基準に適合しているか

貨物利用運送事業法、貨物自動車運送事業法、倉庫業法といった、それぞれの事業法に定められた基準に適合していることも必要です。

●施設を整備する場合には、主務省令に適合しているか

営業倉庫のような、特定流通業務施設を整備する場合には、立地・規模・構造・設備に関して、要件を満たしている必要があります。

毎年募集が開始されると「募集要項」が公開されます。

まずは「募集要項」で詳細をご確認のうえ、申請手続きを進めてください。

モーダルシフト事例

では、モーダルシフトを実行すると、どのような効果があるのでしょうか。

対応した企業の事例を確認してみましょう。

【飲料メーカーの工場間輸送における改善事例】

この飲料メーカーでは、工場間輸送でモーダルシフトに対応して、CO2排出量削減を達成しました。

かつて瀬戸内エリアの工場と東京工場間の工場間輸送を、基本的にトラック輸送していました。出荷数量が少ない時は、鉄道用12ftコンテナを利用することもありましたが、コンテナの数も限られており、荷量も増加したことから、トラック輸送に頼っていました。

モーダルシフトは、鉄道用20ft大型コンテナと海上用トレーラーシャーシを導入することで可能となりました。これまで、瀬戸内エリアの各工場で手配していた輸送を、本社のある松山に一本化して「共同配送」したことにより、実施前に比べ50%以上のCO2排出量削減が達成されています。

【自動車メーカーの部品調達における改善事例】

ミルクランとモーダルシフトを組み合わせることにより、部品調達の効率化とCO2排出量の削減を達成した事例です。

これまでこの自動車メーカーが部品メーカーから調達していた部品は、各部品メーカーがそれぞれ手配したトラックで輸送されていました。一回ごとの輸送数量がまとまらず、モーダルシフトが難しい状況でした。ただ、部品メーカーは一定エリアに集中しているため、部品調達を、各部品メーカーからの輸送ではなく、自動車メーカー側から各部品メーカーを巡回するミルクランシステムを導入することで、鉄道輸送に変更できるだけの輸送量を確保できるようになりました。ミルクランと鉄道輸送の組み合わせにより、CO2排出量は30%以上削減されました。

※ミルクランについては、こちらの記事で解説しています。

モーダルシフトは、毎年物流総合効率化法の支援が発表されています。

上記の事例のように、成果がでている企業もありますので、複数事業者での協業によるCO2排出量の削減と労働力不足の改善に対処してみてはいかがでしょうか。

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